2025年2月21日
労務・人事ニュース
建設業の給与が77万7,782円に上昇、前年同月比6.6%の増加を記録(毎月勤労統計調査 令和6年12月分結果速報)
毎月勤労統計調査 令和6年12月分結果速報 第1表 月間現金給与額(厚労省)
令和6年12月の給与統計が発表され、国内の各業界における月間現金給与額の動向が明らかになった。調査対象は事業所規模5人以上の企業で、産業別に現金給与総額やきまって支給する給与、所定内給与、所定外給与、特別に支払われた給与の金額と前年比が示されている。このデータから、各業界の給与水準や前年との変化を詳細に分析することが可能となる。
全産業平均の現金給与総額は61万9,580円で、前年同月比4.8%の増加が見られた。中でも特に給与の伸びが大きかったのは鉱業・採石業などで、月額90万8,664円と全産業平均を大きく上回る結果となった。前年同月比で35%増加しており、特に特別に支払われた給与が前年比45.3%増と大幅に増えたことが影響していると考えられる。
建設業では月間給与額が77万7,782円となり、前年同月比6.6%の増加が見られた。特にきまって支給する給与が36万7,794円(前年同月比3.8%増)と堅調に推移しており、安定した給与支給の傾向が見られる。一方、所定外給与は3万4,236円で前年比4.1%増と若干の上昇にとどまった。建設業では労働時間の管理が進んでおり、残業代の増加が限定的であることが伺える。
製造業における給与の伸びも注目に値する。平均給与額は79万8,380円で、前年同月比5.4%増加した。特に所定内給与が32万8,432円(前年同月比2.9%増)と堅調に推移し、所定外給与も2万9,723円(同2.8%増)と上昇傾向を維持している。さらに特別に支払われた給与は前年比7.3%増加しており、賞与などの支給が増えた可能性がある。
業界ごとの給与水準を見ると、最も給与額が高いのは鉱業・採石業で、最も低い業界と比較して約2.5倍の給与差があることがわかる。この背景には、業界ごとの労働環境やリスク、専門技術の必要性などが影響していると考えられる。一方、給与の伸び率が比較的低かった業界では、経済環境や企業業績の影響が反映されている可能性もある。
特に注目すべきは、特別に支払われた給与の変化である。これはボーナスや賞与、各種手当などを含むため、企業の業績や経済状況によって大きく変動する傾向がある。今年度のデータでは、全体的に前年より増加している業界が多く、企業が従業員への報酬を手厚くしていることが伺える。特に鉱業・採石業では前年比45.3%増と大幅な伸びを示しており、企業の利益増加に伴い従業員への還元が進んだと考えられる。
また、給与額の増加が労働市場に与える影響も無視できない。給与が上昇することで、求職者がより高待遇の職場を求める傾向が強まり、人材の流動性が高まる可能性がある。特に専門性の高い業界では、優秀な人材を確保するためにさらなる給与引き上げが求められるだろう。一方、給与水準が低い業界では、労働力の確保が課題となる可能性もあり、待遇改善や働き方改革の必要性が高まることが予想される。
このような給与動向は、企業の採用戦略にも大きな影響を与える。給与水準が上昇傾向にある業界では、他社との差別化を図るために福利厚生の充実や柔軟な働き方の導入が求められる。一方、給与の伸びが低い業界では、給与以外の魅力を強調し、求職者にアピールする必要がある。例えば、働きやすい環境の整備やキャリアアップの支援、ワークライフバランスの向上などが重要となるだろう。
今回の調査結果を踏まえ、企業は自社の給与水準が業界内でどの位置にあるのかを把握し、適切な人事戦略を立てることが求められる。特に優秀な人材を確保するためには、給与だけでなく、総合的な待遇の向上が不可欠である。今後も経済状況や市場の変化を注視しながら、柔軟な対応を進めることが求められるだろう。
⇒ 詳しくは厚生労働省のWEBサイトへ