2024年9月3日
労務・人事ニュース
徳島県内の正社員有効求人倍率、前年同月比0.05ポイント低下で0.99倍に
最近の雇用失業情勢(令和6年7月分)(徳島労働局)
徳島県の雇用情勢について、詳細に分析します。近年、徳島県の経済状況は緩やかな回復を見せていますが、雇用市場には依然として課題が残っています。令和6年7月の有効求人倍率は1.12倍となり、前月比で0.03ポイント低下しました。これは求人の増加が鈍化している一方で、求職者数が増加していることを示しています。特に正社員の有効求人倍率は0.99倍と、前年同月比で0.05ポイント低下しており、安定した雇用を確保するための課題が浮き彫りになっています。
徳島県内での有効求人数は、前年同月に比べて2.7%減少し、14,950人となりました。これに対して、有効求職者数は前年同月比で4.9%増加し、13,711人となっています。新規求人数も同様に減少傾向を示しており、前年同月比で1.2%減の5,461人でした。一方、新規求職者数は1.2%増加し、2,265人となっています。このような数字から、雇用市場において求人が求職を上回っているものの、その差は縮小していることが分かります。
産業別に見ると、運輸業や郵便業は31.8%増加している一方で、製造業は17.5%の減少を示しています。教育や学習支援業では47.1%と大幅な増加が見られる一方で、宿泊業や飲食サービス業では12.1%の減少が見られます。これらのデータは、業種による雇用情勢のばらつきが大きく、特に労働集約的なサービス業や製造業での雇用機会が減少していることを示しています。
地域別に見ると、徳島市を含む県央地域の有効求人倍率は1.30倍と他の地域に比べて高く、求人が充足している状況です。一方、県西地域では1.17倍、県南地域では0.94倍と、地域間での雇用機会に大きな差があります。これは、地域ごとの産業構造や経済活動の違いに起因していると考えられます。例えば、県央地域ではサービス業が盛んであり、これが求人倍率の高さに寄与している一方で、県南地域では農業が主要産業であるため、求人の増加が限定的です。
年齢別では、25歳未満の若年層において1.44倍の有効求人倍率が示され、他の年齢層に比べて比較的高い水準にあります。しかし、45歳以上の層では求人倍率が1.0倍を下回っており、高齢者の就職機会が限られていることが分かります。これは、若年層に対する需要が高まる一方で、経験や技能が求められる高齢者層では、適切な職種が少ないことを示唆しています。
企業倒産についても触れておくと、令和6年7月には徳島県内で5件の企業倒産が報告されており、負債総額は5億6,500万円に上りました。これは前年同月比で1件の増加、負債総額で2億2,900万円の増加を示しており、依然として経済環境の不確実性が企業経営に影響を与えていることが伺えます。特に、販売不振が主な原因となっていることから、消費者需要の低迷が影響していると考えられます。
このように、徳島県の雇用情勢は地域や産業ごとに異なる特徴を持ちながらも、全体的には緩やかな改善が見られる一方で、依然として多くの課題が残されています。今後の経済状況や政策の動向により、さらなる改善が期待されますが、特に高齢者の雇用や地域間の格差解消に向けた取り組みが求められます。また、企業においては、求職者ニーズに応じた求人条件の見直しや、職業紹介の充実を図ることが重要です。こうした取り組みを進めることで、地域全体の雇用状況の安定化を図る必要があります。
県南地域の有効求人倍率0.94倍、農村部の労働力不足が深刻化
徳島県の労働市場に影響を与える要因について分析します。まず、徳島県の労働市場は、全国的な経済動向と密接に関連しています。特に、全国的な景気の足踏みや欧米諸国での高金利、中国の不動産市場の停滞といった外的要因が、県内経済にも影響を与えています。これらの要因が、県内企業の投資意欲や生産活動に影響を与え、結果的に労働市場の状況にも反映されています。
徳島県の雇用情勢は、地域ごとの産業構造や経済活動の違いが顕著に現れています。例えば、県央地域ではサービス業や製造業が主要な産業であり、これらの分野での雇用が比較的安定しています。しかし、県南地域や県西地域では、農業や林業など、一次産業が中心となっており、これらの産業では求人が限られているため、雇用機会が少ないのが現状です。特に、地域間での雇用機会の格差が広がりつつあり、県内の人口動態にも影響を及ぼしています。若者が都市部へ流出する傾向が強まり、高齢化が進む農村部では、労働力不足が深刻化しています。
また、全国的な労働力人口の減少も徳島県の労働市場に影響を与えています。少子高齢化が進む中、若年層の労働力確保が難しくなっており、これが県内企業の採用活動に影を落としています。特に、介護や医療といった福祉関連産業では人材の需要が高まっている一方で、供給が追いつかない状況が続いています。このような状況下で、企業はより多様な雇用形態や働き方の提供を模索しており、これが労働市場の構造的な変化を促進しています。
さらに、徳島県内の中小企業は、全国的な経済動向に加えて、地域特有の課題にも直面しています。例えば、企業倒産の増加は、地域経済の脆弱性を浮き彫りにしており、これがさらに労働市場に悪影響を及ぼす可能性があります。倒産件数が増加することで、雇用の不安定化が進み、求職者の生活基盤が揺らぐリスクが高まっています。また、こうした状況が続けば、企業は新たな投資を控え、結果的に地域経済の停滞を招くことが懸念されます。
これらの要因が重なり合うことで、徳島県の労働市場は不安定な状態にありますが、同時にチャンスも存在します。例えば、デジタル化やリモートワークの普及により、地域にとらわれない働き方が広がりつつあります。これにより、都市部からの移住者やUターン者が増加する可能性があり、地域経済の活性化に寄与することが期待されます。企業にとっては、こうした新しい労働力を取り込むことで、経営の安定化や成長の機会を見出すことができるでしょう。
総じて、徳島県の労働市場に影響を与える要因は多岐にわたります。全国的な経済動向、地域ごとの産業構造、人口動態、企業の経営状況など、複数の要因が複雑に絡み合い、今後の雇用情勢を左右するでしょう。これらの要因を的確に把握し、柔軟に対応することで、地域経済の持続的な発展が可能になると考えられます。
⇒ 詳しくは徳島労働局のWEBサイトへ