2025年3月11日
労務・人事ニュース
情報通信業の平均月給は527,751円!前年比2.8%増で安定した給与上昇を実現(毎月勤労統計調査 令和6年分結果確報)
毎月勤労統計調査 令和6年分結果確報 第1表 月間現金給与額(厚労省)情報通信業
令和6年の毎月勤労統計調査によると、情報通信業の平均月間現金給与額は527,751円であり、前年比2.8%の増加が確認されている。この増加率は全産業平均の2.8%と同水準であり、情報通信業界が安定した賃金上昇を維持していることを示している。特に、基本給の増加が業界全体の給与水準を押し上げる要因となっている。
給与の内訳を詳しく見ると、基本給に該当する「きまって支給される給与」は409,576円で、前年比3.9%の増加が見られる。この増加率は他業界と比較しても高く、情報通信業界が継続的な賃金改善を進めていることを示唆している。特に、ITエンジニアやシステム開発職、デジタルマーケティング分野の専門職に対する需要が高まり、それに伴い給与水準の引き上げが行われている可能性がある。
また、時間外手当を含む所定外給与は37,4096円で、前年比3.8%の増加となった。このデータから、業務量の増加に伴い、時間外労働が増加していることが分かる。情報通信業界では、システム開発の進行管理やインフラ運用業務が多く、納期やトラブル対応などで長時間労働が発生しやすい状況が続いている。特に、大手IT企業や通信事業者では、シフト勤務や夜間対応を伴う業務もあり、時間外手当の増加が給与総額の増加につながっていると考えられる。
一方、特別に支払われた給与、いわゆるボーナスに該当する部分は118,175円で、前年比0.8%の減少が記録されている。ボーナスの減少は、業界全体の収益性の変化が影響している可能性がある。特に、クラウドサービスやデジタルプラットフォーム事業の競争が激化し、利益率の低下が企業の賞与支給額に影響を与えていると考えられる。しかし、ボーナスの減少率は比較的軽微であり、基本給や時間外手当の増加により、総支給額が全体として増加している点は注目に値する。
他業界と比較すると、情報通信業の給与水準は全体的に高い傾向がある。例えば、鉱業・採石業(411,892円)、建設業(453,559円)、製造業(412,916円)と比較すると、情報通信業の527,751円は約12~28%高い水準にあり、特に基本給の高さが際立っている。電気・ガス業(599,269円)には及ばないものの、IT技術職やデジタルサービス関連の職種は今後も給与水準の向上が期待される。
採用担当者にとって重要なのは、この給与水準が人材確保にどのような影響を与えるかである。情報通信業界は、ITエンジニアやデータサイエンティストなどの高度な専門職が求められるため、給与水準を維持・向上させることで優秀な人材の確保を図ることが重要となる。特に、ソフトウェア開発やAI・データ解析などの成長分野においては、競争が激化しており、企業は給与面での魅力を強化しなければ、優秀な人材を確保することが難しくなる。
また、今後の課題として、労働時間の適正化と労働環境の改善が挙げられる。情報通信業は、長時間労働が発生しやすい業界であり、時間外手当の増加がその傾向を裏付けている。しかし、働き方改革の影響により、一部の企業ではフレックスタイム制やリモートワークの導入が進んでおり、ワークライフバランスの改善が期待される。採用活動においては、給与の高さだけでなく、柔軟な働き方の導入や福利厚生の充実を訴求することが、求職者にとって魅力的な要素となる。
今後の展望として、情報通信業はデジタル技術の発展とともにさらなる成長が見込まれる。特に、AI、クラウドコンピューティング、5G通信技術の普及が進むことで、新たな雇用機会が生まれると予測されている。企業は、給与水準の維持だけでなく、スキルアップの機会を提供し、次世代のIT人材を育成することが求められる。こうした取り組みにより、業界全体の競争力を維持しながら、優秀な人材の確保につなげることができる。
⇒ 詳しくは厚生労働省のWEBサイトへ