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2025年3月7日

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操縦士の女性比率1.9%から10%へ!航空業界のダイバーシティ推進計画が始動

「操縦士・航空整備士の女性活躍推進WG」とりまとめの公表 ~世界トップレベルの女性活躍分野の実現に向けて~(国交省)

航空局安全部安全企画室は、2025年2月21日、「操縦士・航空整備士の女性活躍推進ワーキンググループ(WG)」のとりまとめを公表した。この取り組みは、女性比率が著しく低い日本の操縦士・航空整備士の分野において、女性の活躍を推進し、今後の航空需要を支える人材基盤を強化することを目的としている。昨年10月に設置された有識者によるワーキンググループでの議論を経て、今回、女性の参画を促進するための具体的な取り組みが策定された。

この背景には、航空業界全体の人材不足が深刻化している現状がある。特に操縦士の大量退職時代が到来しつつあり、整備士の養成機関である航空専門学校の入学者数も半減していることが大きな課題となっている。これまで航空業界は、男性主体の職場環境が根強く残っていたが、今後はより多様な人材を確保し、女性を含む幅広い層の参画を促進することが求められている。

現在、日本の操縦士の女性比率は1.9%と、海外の4.7%と比べて著しく低い。また、他の交通分野と比較しても、日本のタクシー業界では4.2%、船員では2.9%の女性比率となっており、航空分野の女性進出が遅れていることが明らかである。一方で、航空整備士においては日本の女性比率は5.1%と、海外の3.1%を上回るものの、職場環境の課題から定着率が低い状況にある。これらの状況を踏まえ、ワーキンググループでは、10年後に世界トップレベルとなる10%の女性比率を実現することを目標に掲げた。

この目標を達成するためには、操縦士や整備士を目指す女性の増加と、職場での定着率向上の両面からのアプローチが必要とされる。まず、女性が航空業界に参入しやすくなるための環境整備が不可欠である。具体的には、航空大学校の入学要件の見直しが進められる。現在、航空大学校には身長制限や高度な理系科目の履修要件があるが、これを見直し、女性の受験機会を拡大する方向で検討が進められている。また、女性枠の導入も検討されており、これにより女性受験者の増加を図ることが期待されている。

さらに、官民連携による広報活動の強化が推進される。女性が航空業界でキャリアを築くことの魅力を伝えるため、業界団体や航空会社が協力し、戦略的かつ継続的な広報活動を実施するための協議体が設置される予定である。これにより、航空業界に興味を持つ若年層の女性が増えることが期待される。

また、女性が職場に定着しやすい環境を整備するための取り組みも重要となる。その一環として、国家資格制度の見直しが行われる。現在、操縦士の国家資格では、学科試験合格後2年以内に実地試験を受験しなければならないとされているが、この期間を延長し、育児休業などのライフイベントに配慮した制度へと変更することが検討されている。これにより、出産・育児を経ても資格取得の機会を維持できるようになり、女性が航空業界で長く活躍できる環境が整うことになる。

加えて、航空整備士の分野では、体力面や筋力面の不足を補うツールの普及が進められる。女性整備士が安心して業務を遂行できるよう、作業を補助する機器の導入や、メーカーへの技術革新の働きかけが行われる予定である。こうした取り組みにより、女性が整備士として活躍しやすい環境が整い、定着率の向上につながることが期待されている。

さらに、企業文化の改革も重要な課題として挙げられている。航空業界では、これまで男性中心の職場環境が根強く残っており、女性がキャリアを築く上での障壁となっていた。これを解消するため、経営層と現場の連携を強化し、企業文化の改革を進める必要がある。例えば、業界団体が共通のコミュニティを設定し、女性が働きやすい職場環境を確保するためのガイドラインを策定することが求められる。また、女性のキャリアパスを明確にし、長期的な視点でのキャリア形成を支援する施策も重要となる。

このように、「操縦士・航空整備士の女性活躍推進ワーキンググループ」によるとりまとめは、日本の航空業界における女性の活躍を促進し、将来的な航空需要に対応するための重要な取り組みとなる。今後、これらの施策が具体化されることで、航空業界全体の人材確保が進み、多様な人材が活躍できる環境が整備されることが期待される。

⇒ 詳しくは国土交通省のWEBサイトへ