2024年12月21日
労務・人事ニュース
日本が国際成人力調査で読解力・数的思考力の世界1位を達成
国際成人力調査(PIAAC:ピアック)(文科省)
国際成人力調査(PIAAC)の実施と日本の成果
国際成人力調査(PIAAC)は、OECD(経済協力開発機構)が主導する成人スキルに関する大規模な調査であり、16歳から65歳の成人を対象に、読解力、数的思考力、ITを活用した問題解決能力の3つの分野におけるスキルを測定しています。この調査の目的は、成人が社会や職業で求められるスキルをどの程度習得しているのか、またそのスキルが年齢や学歴、職業、所得などとどのように関連しているのかを明らかにすることです。日本はこの調査に参加し、非常に高いスキルレベルを示しました。
日本の成人力における優れた成果
日本は、読解力と数的思考力において、参加国中で1位という結果を収めました。具体的には、日本の成人の読解力の平均得点は296点で、OECD平均の273点を大きく上回り、他の参加国に比べて圧倒的に高い水準を示しました。さらに、レベル3以上の高スキルを持つ成人の割合が最も高く、レベル1以下の成人は10%未満という非常に低い割合であり、この点でも日本は他国をリードしています。これは、日本の教育システムが非常に優れていることを示しており、特に成人期になっても高いスキルを維持していることが強調されました。
また、数的思考力においても、日本は平均得点288点を記録し、OECD平均の269点を大きく上回りました。この結果は、数学や日常的な計算に関わるスキルが非常に高いことを示しており、特にレベル3以上の成人の割合が最も高いという結果も出ています。さらに、レベル1以下の成人の割合が日本では1.2%と極めて少なく、これはスキルが低い層がほとんど存在しないことを示しています。日本の成人は、他国に比べて非常に高いスキルを維持していることが、調査結果からも明らかになりました。
ITを活用した問題解決能力の強さ
ITを活用した問題解決能力に関しても、日本は参加国中で1位という結果を収めました。日本の成人の平均得点は294点で、OECD平均の283点を大きく上回っています。このスキル分野では、コンピュータを使った問題解決能力が測定されるため、デジタル技術を活用した作業や情報管理のスキルが重要となります。日本では、ITを活用した問題解決能力のレベル3の成人が最も多く、レベル1未満の成人の割合は最も少なく、IT分野における成人の能力が非常に高いことが確認されました。
このITスキルの高さは、職場での業務効率やデジタル技術の活用に直結するため、企業の競争力にも大きな影響を与えるものです。特に、今後のデジタル化社会において、このスキルを持つ人材はますます重要視されるでしょう。ITスキルを活用する能力が高い日本の成人は、グローバルな競争環境でも強いアドバンテージを持っているといえます。
年齢別、学歴別、職業別のスキル分布
年齢によるスキルの変化については、一般的に成人が30歳を過ぎると、読解力や数的思考力などのスキルは徐々に低下する傾向が見られますが、日本の成人は他国と比較してその低下幅が小さいことが特徴的です。日本では、特に加齢に伴っても高いスキルを維持している成人が多く、社会経験を積んだ人々がスキルを維持・向上させるための環境が整っていることが伺えます。
学歴別に見ると、日本では学歴が高いほどスキルが高くなる傾向があり、特に高等教育を受けた成人のスキルが非常に高いことが確認されています。また、職業別に見ても、管理職や専門職のスキルが高い一方、単純作業の従事者でも高いスキルを持つことが示されています。特に日本の単純作業従事者は、他国の事務職やサービス業の従事者と同等以上の読解力を有しており、これは日本の労働市場が持つ高いスキル水準を反映しています。
スキルと賃金の関係
スキルと賃金との関連も調査され、読解力や数的思考力の高い成人ほど賃金が高い傾向があることが確認されました。日本では、スキルが高い成人が特に高い賃金を得ており、これは職場での生産性の高さや能力に対する評価が賃金に反映されていることを示しています。スキルが高いことが、個人のキャリアや生活水準に直結していることは、企業にとっても非常に重要な要素となるでしょう。
今後の人材育成と企業の役割
PIAACの結果は、企業にとって人材育成の重要性を再認識させるものです。企業は、成人スキルを高めるための研修や教育プログラムを強化し、社員のスキルを維持・向上させる取り組みを行うべきです。また、採用においては、スキルが高い求職者を選別する基準を明確にし、スキルの向上を促進する環境を整えることが、企業の競争力を高めるために不可欠です。
日本は、教育システムの強化や職場でのスキル活用の面で優れた実績を上げており、今後も成人力を高める取り組みを続けることが、企業の成長や社会全体の発展に寄与することになります。
⇒ 詳しくは文部科学省のWEBサイトへ