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2024年6月24日

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日本における在宅勤務の効果 自己学習14.1%増加、オンライン学習15.6%増加、対面学習は8.9%減少

ワーキングペーパーシリーズ No.74:「Work from Home and Human Capital Investment-在宅勤務と人的資本投資-」を掲載(社人研)

新型コロナウイルス感染症のパンデミックにより、多くの企業が在宅勤務(WFH)を導入することを余儀なくされました。これに伴い、在宅勤務が人的資本投資に与える影響についての関心が高まりました。日本のパネルデータを用いた本研究では、在宅勤務が企業提供の研修、労働者自身が主導する研修、その他の学習活動に与える影響を分析しています。

在宅勤務の導入が自己学習とオンライン学習を促進する一方で、対面での学習機会は減少することが明らかになりました。この影響は特に子供を持つ労働者や非正規雇用者に顕著であり、在宅勤務がオン・ザ・ジョブトレーニング(OJT)およびオフ・ザ・ジョブトレーニング(Off-JT)を増加させる可能性が示唆されていますが、これらの効果は統計的に有意ではありませんでした。

新型コロナウイルス感染症の流行初期には、社会的距離を確保するための措置として在宅勤務が推奨されました。これにより、在宅勤務者の特性や在宅勤務が生産性や精神衛生に与える影響について、多くの研究が行われました。特に、在宅勤務が既存の生産性レベルを維持できるかどうかについての関心が高まりました。

パンデミックが収束した後、在宅勤務は柔軟な働き方のパラダイムとしての可能性が注目されるようになり、家事や育児の責任が増加するかどうか、特に性別による家庭内労働分担の影響についての研究も行われました。例えば、在宅勤務は男性の家事参加を増加させることが示されていますが、余暇時間がキャリアにどのように影響するかについては、これまで十分に研究されていませんでした。

また、教育段階を超えた人的資本投資の重要性が増しており、特に日本では雇用期間が長期化しているため、就職後の継続的な学習が求められています。企業も労働者の人的資本を増強する役割を果たしており、成人教育や訓練プログラムの効果が多くの研究で示されていますが、研修プログラムへの参加を促す要因についてはあまり研究が進んでいません。

日本は成人教育の参加率が低い国として知られており、企業内での人的資本投資も減少傾向にあります。特に、2000年代後半以降、その傾向が顕著です。在宅勤務と継続学習、人的資本投資の重要性が増している一方で、これらの関係を探る研究はほとんど行われていません。

本研究では、日本のパネルデータを用いて在宅勤務が個人の人的資本投資に与える影響を調査しました。理論的には、通勤時間の削減が学習やスキル習得の時間に充てられることが考えられますが、在宅勤務が同僚からの学習機会を減少させたり、労働のダイナミクスを変化させる可能性もあります。また、家事や育児に時間が割かれることで、学習への投資が減少する可能性もあります。

これを解明するために、本研究ではCOVID-19によるマクロショックと、職業別に構築された在宅勤務システムの可行性を組み合わせた識別戦略を採用しました。具体的には、職業カテゴリーを用いて前後のCOVID-19ショックを利用し、在宅勤務の導入の内因性を取り除くためのIVとDID方法を組み合わせています。

その結果、在宅勤務は自己学習とオンライン学習をそれぞれ14.1%、15.6%増加させる一方、対面学習は8.9%減少することが明らかになりました。また、OJTとOff-JTにも増加傾向が見られましたが、これらの効果は統計的に有意ではありませんでした。特に、子供を持つ労働者や非正規雇用者に対して、在宅勤務が人的資本を増強する効果が顕著に見られました。

日本の政策的視点からも、本研究の結果は重要です。日本政府は人生100年時代を見据えたリスキリング支援政策を積極的に推進しており、厚生労働省は関連プログラムの助成額を増加させています。また、日本経済団体連合会も企業に対してリスキリングの時間を提供するよう呼びかけています。在宅勤務の導入は、時間の制約を克服し、リスキリングを促進する有力な手段となる可能性があります。

最後に、今後の研究では、在宅勤務と人的資本投資の関係をさらに探求するための新たな識別戦略の開発や、企業内でのトレーニング政策との相互作用についての分析が求められます。

⇒ 詳しくは国立社会保障・人口問題研究所のWEBサイトへ

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