2025年3月28日
労務・人事ニュース
日本のヘルスケアスタートアップIPO平均147か月、事業会社のM&A戦略がカギ
- 「駅チカ」/正看護師/美容クリニック/夜勤なし
最終更新: 2025年4月30日 22:32
- 「夜勤なし」/准看護師/介護施設/オンコールなし
最終更新: 2025年4月30日 22:32
- 「高給与」/准看護師・正看護師/クリニック/うれしい土日祝休み
最終更新: 2025年4月30日 22:32
- 「夜勤なし」/正看護師/オンコールなし
最終更新: 2025年4月30日 22:32
ヘルスケアスタートアップと事業会社間の連携・出資・買収のための手引書を策定しました(経産省)
2025年3月12日、経済産業省はヘルスケアスタートアップの成長を促進し、事業会社との連携、出資、買収をスムーズに進めるための指針として「GROWTH & EXIT PLAYBOOK-ヘルスケアスタートアップと事業会社間の連携・出資・買収のための手引書」を策定した。本手引書は、ヘルスケア業界の市場環境やビジネス領域ごとの課題を整理し、グローバルな視点を交えてスタートアップの成長戦略やエグジット(EXIT)戦略を支援する内容となっている。
日本におけるヘルスケアスタートアップの数は2015年以降着実に増加しているが、他業界のスタートアップと比較すると、サービスが実際にユーザーの課題を解決できることを証明するエビデンスの構築や、実証実験を行うフィールドの確保に課題があるとされる。また、日本ではヘルスケアスタートアップのエグジット事例が少なく、スタートアップエコシステムの発展が十分に進んでいない現状が指摘されている。このため、ヘルスケアスタートアップが成功するためには、事業会社との連携が鍵を握ることになる。
本手引書は、ヘルスケアスタートアップと事業会社がどのように連携し、成長を遂げるかについて具体的な指針を提供している。まず、ヘルスケアスタートアップの市場環境について、日本は高齢化率が世界最高水準に達しており、老化関連疾患や生活習慣病対策が喫緊の課題となっていることが挙げられる。こうした社会的な背景から、健康長寿社会の実現に向けたヘルスケアサービスの社会実装が必要不可欠となっている。しかし、国内のヘルスケアスタートアップは他業界に比べて成長やスケール化の壁に直面しやすく、特にエビデンス構築の難しさや実証フィールドの確保に苦慮している。そのため、本手引書では市場環境情報の提供に加え、成長・エグジット戦略の課題と解決策を整理し、具体的な事例を提示することで、ヘルスケアスタートアップの持続可能なエコシステム形成を支援する。
本手引書が対象とするヘルスケアスタートアップは、「ヘルステック」領域で事業展開する企業であり、具体的には健康増進、SaMD(Software as a Medical Device)、医療DX、介護DXの4つの分野に焦点を当てている。健康増進分野では、生活習慣病予防を目的としたアプリやサービスが対象となり、パーソナライズされた健康データの記録・可視化や行動変容の促進を行うツールが含まれる。SaMD分野では、診断や治療の補助を行うデジタルツールが該当し、医師の指導の下で使用されることが多い。医療DXでは、電子カルテの高度化や診療予約システムの整備、処方管理の効率化、遠隔診療の推進などが含まれる。介護DXは、介護現場での業務効率化や利用者のQOL向上を目的としたソリューションを提供し、ケアプランの作成支援や業務プロセスの効率化を行う。
ヘルスケアスタートアップの成長を阻む要因として、日本では健康意識が低く、利用者がサービスに対して課金する文化が十分に根付いていないことが挙げられる。また、日本の手厚い医療制度が健康リテラシーの向上を妨げ、ヘルスケアサービスのマネタイズを難しくしている側面もある。さらに、ヘルスケアスタートアップはそれぞれの領域で特有の課題を抱えており、例えば健康増進分野ではユーザーの継続利用率の低さ、SaMD分野では治験・承認プロセスの負担の大きさ、医療DX・介護DX分野では既存オペレーションの変更に対する抵抗感がスケールの壁となっている。
資金調達面では、日本のヘルスケアスタートアップはシード期の脱落率が高いが、その後の成長段階では比較的安定する傾向にある。グローバル市場と比較すると、日本のヘルスケアスタートアップは資金調達環境が厳しく、特に2020年以降は評価額の引き下げや市場の調整局面が続いている。そのため、ヘルスケアスタートアップは適切なエグジット戦略を策定し、事業会社との連携を通じて成長を加速させることが求められる。
本手引書では、ヘルスケアスタートアップのエグジットに向けたチェックリストも提供しており、M&AやIPOの選択肢を含めた戦略的な視点が必要とされることを示している。特に、日本ではM&AよりもIPOの比率が高く、IPOまでの期間が平均147か月と長期化する傾向にある。これに対し、グローバル市場ではM&Aがより一般的なエグジット手段として活用されている。事業会社によるM&Aが少ない理由の一つとして、M&A後の統合プロセス(PMI)の経験不足が指摘されており、事業会社側のM&A戦略の見直しも求められている。
事業会社がヘルスケアスタートアップへの出資・買収を進める際には、合理的な企業価値評価が重要となる。特に、ヘルスケア業界ではエビデンスの構築や規制の遵守が求められるため、単なる収益性だけでなく、長期的な成長性や市場適応力を評価する視点が不可欠である。さらに、買収後の従業員のモチベーション維持や創業者のキャリア支援を含めたPMI戦略が成功の鍵となる。
今回策定された「GROWTH & EXIT PLAYBOOK」は、ヘルスケアスタートアップの持続可能な成長を支援し、事業会社との連携を促進するための包括的な指針となる。本手引書を活用することで、スタートアップはより戦略的な成長とエグジットを実現し、事業会社は適切なパートナーシップを築くことができる。
⇒ 詳しくは経済産業省のWEBサイトへ