2024年9月23日
労務・人事ニュース
日本の人手不足に対する企業の戦略:2024年の労働市場の変革
令和6年版 労働経済の分析 -人手不足への対応-(厚労省)
現在、日本の労働市場は深刻な人手不足に直面しており、この問題への対応が急務となっています。特に少子高齢化が進行する中、労働力供給の制約が顕著であり、企業は人手不足を解消するための様々な対応策を講じています。ここでは、日本における人手不足の背景と、効果的な対応策について解説します。
まず、人手不足の原因について考える際、過去半世紀にわたる日本経済の動向を振り返る必要があります。1970年代の高度経済成長期末期、1980年代後半から1990年代前半のバブル経済期、そして2010年代以降の3つの時期にわたって、人手不足が顕著に現れました。それぞれの時期において、経済の成長に伴う労働力需要の増加が背景にありますが、特に2010年代以降は、サービス産業の拡大とともに、労働力の不足が長期化・固定化していることが特徴です。
2010年代に入ると、企業の付加価値の向上や経済の好転が進む一方で、求人の充足率が著しく低下し、欠員率が高まる傾向が続いています。労働市場では特定の産業や職種で労働力を確保することが難しくなり、多くの企業が正社員の人手不足に直面しています。特に小売・サービス業や介護分野においては、求人に対して適切な労働者を確保することが難しく、労働力のミスマッチが深刻化しています。
この問題に対する対応として、まず取り組むべきは「誰もが活躍できる社会」の実現です。女性や高齢者、外国人労働者の就労を促進し、労働力を多様化することが求められています。例えば、近年では高齢者や女性の労働市場への参加が進展しており、企業も多様な人材を受け入れるための労働環境の整備が進んでいます。さらに、外国人労働者の受け入れも拡大しており、その結果、労働力の確保が進みつつありますが、まだ十分とは言えません。
特に介護分野においては、深刻な人手不足が続いています。介護事業所の多くが「構造的な不足」を感じており、短期的な解決が見込めない状況です。介護分野では、賃金水準を引き上げることが求められており、また、労働環境を改善するための取り組みが重要となっています。具体的には、介護福祉機器の導入やICTの活用によって、労働者の負担を軽減する施策が効果を上げています。このような技術の導入は、介護現場において職員の身体的・精神的負担を減らし、人材の定着率を向上させる効果が期待されています。
小売・サービス業でも同様に、人手不足が深刻です。この分野では、正社員の労働条件の改善が重要視されています。例えば、賃金の引き上げや有給休暇の取得促進、時間外労働の削減などが効果的な対策とされています。また、パートタイム労働者に対しても、時給を大幅に引き上げることが人材確保に寄与しています。人手不足の解消には、労働者が安心して働ける環境を整えることが不可欠です。
さらに、労働市場全体を見渡すと、特定の業界だけでなく、幅広い産業にわたって人手不足が広がっています。企業は求人活動を強化しているものの、求職者が希望する条件と企業が提供する労働条件のミスマッチが顕在化しており、これが人手不足を一層深刻化させています。労働市場のマッチング効率を高めるためには、ハローワークや有料職業紹介所の機能を改善することが求められています。
賃金と人手不足の関係も見逃せません。近年、賃金の上昇が人手不足を一部緩和する効果が見られるものの、物価上昇がこれに追いついておらず、実質賃金の伸びが鈍化しています。企業は競争力を維持するためにも、賃金の引き上げに加えて、職場環境の改善や教育・研修制度の充実を図り、労働者の定着を促す必要があります。特に介護や小売・サービス分野では、労働者が長く働ける環境を整えることが、将来的な労働力確保に向けて重要です。
今後の人手不足に対応するためには、これまで以上に労働力の多様化を図り、柔軟な働き方を推進することが鍵となるでしょう。また、企業が労働条件を改善し、求職者にとって魅力的な職場環境を提供することが、人材確保に直結するものと考えられます。
⇒ 詳しくは厚生労働省のWEBサイトへ