2024年6月15日
労務・人事ニュース
日本の出生数減少と死亡数増加が顕著、自然増減数マイナス84万8659人で人口減少が進
令和5年(2023)人口動態統計月報年計(概数)の概況(厚労省)
令和5年の人口動態に関する結果が発表されました。まず、出生数について詳しく見ていきます。令和5年の出生数は72万7277人となり、前年の77万759人と比較して4万3482人減少しました。出生率も6.0と前年の6.3から低下しています。これは、日本全体での少子化が進行していることを示しています。母の年齢別に見ると、45歳以上の年齢層では前年より増加が見られたものの、他のすべての年齢層では減少しています。特に、30歳から34歳の年齢層での出生数の減少が顕著であり、若い世代での出産が減少していることが分かります。合計特殊出生率も1.20で、前年の1.26から低下しており、これは人口置換水準を大きく下回っています。
次に、死亡数についてです。令和5年の死亡数は157万5936人で、前年の156万9050人から6886人増加しました。死亡率も13.0と前年の12.9から上昇しています。この増加の主な原因として、高齢化の進行が挙げられます。高齢者の割合が増えるとともに、死亡数も増加する傾向があります。主な死因としては、悪性新生物が第1位で全死亡者の24.3%を占めています。続いて心疾患が第2位で14.7%、老衰が第3位で12.1%を占めています。特に悪性新生物による死亡は増加傾向にあり、健康管理や早期発見の重要性がますます高まっています。
自然増減数についても詳しく見ていきます。出生数と死亡数の差である自然増減数はマイナス84万8659人で、前年のマイナス79万8291人からさらに5万368人減少しました。自然増減率もマイナス7.0と前年のマイナス6.5から低下しています。これは、日本の人口が自然減少していることを示しており、全ての都道府県で自然増減数が減少しています。特に、都市部だけでなく地方でも人口減少が進んでいることが懸念されています。
また、死産数についても言及します。令和5年の死産数は1万5532胎で、前年の1万5179胎から353胎増加しました。死産率も20.9と前年の19.3から上昇しています。自然死産率は9.6、人工死産率は11.3と共に上昇しており、特に人工死産率の上昇が目立ちます。これは、出産に伴うリスクが依然として高いことを示しています。
次に、婚姻件数についてです。令和5年の婚姻件数は47万4717組で、前年の50万4930組から3万213組減少しました。婚姻率も3.9と前年の4.1から低下しています。これは、若年層の結婚離れや経済的不安が原因と考えられます。平均初婚年齢は夫が31.1歳、妻が29.7歳で、夫婦共に前年と同じ年齢となっています。これは、結婚が遅れる傾向が続いていることを示しています。再婚件数の割合をみると、夫18.5%、妻16.0%で、夫は前年より低下し、妻は前年と同じ割合となっています。
最後に、離婚件数についても詳しく見ていきます。令和5年の離婚件数は18万3808組で、前年の17万9099組から4709組増加しました。離婚率も1.52と前年の1.47から上昇しています。離婚件数の年次推移をみると、昭和39年以降毎年増加を続けたものの、昭和59年からは減少し、平成に入り再び増加傾向にあったが、平成14年の28万9836組をピークに減少傾向が続いています。同居期間別に離婚件数をみると、令和5年は3年未満を除いた同居期間で前年より増加しています。これは、結婚生活の長期化が離婚に結びつくケースが増えていることを示しています。
これらの結果から、日本の人口動態において少子高齢化が一層進行していることが明確にわかります。出生率の低下や死亡率の上昇は、今後の社会構造や経済活動に大きな影響を与えることが予想されます。これらのデータを基に、政府や自治体は政策の見直しや新たな対策が求められています。例えば、出生率を向上させるための支援策や、高齢者の健康管理を強化する施策が重要となります。また、地域の活性化を図るために、地方への移住促進や子育て支援の充実も検討する必要があります。
以上が令和5年の人口動態に関する報告の詳細です。少子高齢化の進行に伴い、日本社会は今後ますます厳しい課題に直面することが予想されます。政府や自治体はこれらのデータを基に効果的な対策を講じ、持続可能な社会の実現を目指して努力することが求められています。
出生率低下と死亡数増加が企業の人材採用に及ぼす長期的な影響
令和5年の人口動態の結果を踏まえ、日本の労働市場に将来的に与える影響について考察します。まず、出生数の減少と出生率の低下は将来的な労働力人口の減少を意味します。具体的には、令和5年の出生数が72万7277人と過去最低を記録し、合計特殊出生率も1.20に低下していることから、将来的に労働力となる若年人口が減少することが予想されます。これにより、企業は人材の確保が難しくなり、特に中小企業や地方企業にとって深刻な問題となるでしょう。
次に、死亡数の増加と高齢化の進行も大きな影響を与えます。令和5年の死亡数は157万5936人で、死亡率も13.0に上昇しています。高齢化が進行すると、労働力人口に占める高齢者の割合が増加し、働き盛りの世代の比率が低下します。これにより、年金や医療費などの社会保障費が増大し、現役世代の負担が増加します。また、高齢化による労働力の減少は、熟練労働者の引退によって技能や知識の継承が難しくなるという問題も引き起こします。
さらに、婚姻件数の減少と初婚年齢の上昇も労働市場に影響を及ぼします。令和5年の婚姻件数は47万4717組で、平均初婚年齢は夫が31.1歳、妻が29.7歳となっています。結婚や出産の遅れは、家庭と仕事の両立が難しくなる要因の一つであり、特に女性の労働市場への参加に影響を与える可能性があります。育児や家庭の負担が増えることで、女性が働き続けることが難しくなり、結果として労働力の供給がさらに減少することが懸念されます。
これらの人口動態の変化は、日本の経済全体に広範な影響を及ぼします。まず、労働力不足により企業の生産性が低下し、経済成長が鈍化する可能性があります。特に、技術やサービス業など人手に依存する産業においては、労働力不足が深刻な課題となるでしょう。企業は生産性を維持するために自動化やAIの導入を進める必要がありますが、これには多大な投資が必要であり、すべての企業が対応できるわけではありません。
また、労働力の供給が減少することで賃金の上昇圧力が高まり、企業のコストが増加します。これにより、商品の価格が上昇し、消費者の購買力が低下する可能性があります。さらに、労働力の不足は移民労働者の受け入れを促進する動きにつながるかもしれませんが、文化や社会的な課題も伴います。
一方で、少子高齢化は新たなビジネスチャンスも生み出します。高齢者向けの医療や介護サービスの需要が増加し、関連する産業の成長が期待されます。また、少子化対策として子育て支援や教育分野への投資が増えることで、新しい市場が形成される可能性もあります。
総じて、令和5年の人口動態の変化は日本の労働市場に多大な影響を与え、企業や政府はこれに対応するための対策を急ぐ必要があります。労働力の確保や生産性の向上、社会保障制度の持続可能性を確保するための包括的な政策が求められています。
⇒ 詳しくは厚生労働省のWEBサイトへ