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2024年11月17日

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日本の年金制度改革と企業年金の未来、具体策で老後の安心を確保

『社会保障研究』第9巻第2号 公私年金における連携の考察

日本の年金制度の将来的な方向性について、特に公的年金と私的年金の連携に焦点を当てた議論が進行しています。2024年に行われた財政検証に基づき、今後の年金改革が予定されており、企業や個人がどのように備えるべきかについての具体的な議論が求められています。現行の日本の年金制度は、1階層として国民年金、2階層として厚生年金、そして3階層として私的年金が設けられており、少子高齢化や長寿化に対応するために、これらがどのように連携しうるかが重要な課題とされています。

公的年金は、老後の基本的な生活費を支える基盤として機能しますが、少子高齢化が進む現在では、その給付水準の維持が難しくなりつつあります。これに伴い、私的年金、つまり企業が提供する企業年金や個人型確定拠出年金(iDeCo)などの役割が重要視されています。企業年金には、確定給付型(DB)と確定拠出型(DC)がありますが、どちらも公的年金を補完する形で設計され、老後の所得保障を多層的に支える仕組みとなっています。しかし、企業年金制度はすべての企業で提供されているわけではなく、特に中小企業では導入が難しい現実もあります。このため、私的年金の普及促進やiDeCoなどの個人が自ら加入する年金制度の重要性が増しています。

企業が私的年金を提供していない場合、特に中小企業の従業員にとっては、iDeCoなど自分で積み立てる年金制度を活用することが老後資金の形成に重要となります。しかし、現実には所得水準が低いことで自助努力が難しい層も多く、加入率の低さが課題となっています。こうした背景から、企業や公的支援の役割が改めて見直されており、特に若い世代に対する年金教育が強化されているのが特徴です。公民科や家庭科の授業に金融経済教育が導入され、基礎的な公私年金の理解や資産形成の知識が教育段階で提供されるようになっています。

年金教育の充実により、社会人になる前から年金制度への理解が深まることが期待されています。これは、将来の老後資金形成を支えるうえで重要な取り組みであり、若い世代が自身のライフプランにおいて早期に資産形成を考えるきっかけとなります。特に、20歳以上の全国民が加入対象となったiDeCoは、年金制度を補完する手段として注目され、さらに投資信託などの金融商品と組み合わせることで、リスク分散を図りながら老後資金を積み立てることが奨励されています。

一方で、高齢期における年金受給と資産管理も新たな課題として浮上しています。年金の受給を繰り下げることで、将来の年金額を増やす方法や、企業年金を繋ぎとして活用することで、老後の生活資金に余裕を持たせる工夫も求められています。さらに、長寿リスクや認知機能の低下など、高齢期特有の問題にも備える必要があることが指摘されています。このため、企業年金の運用責任を果たしつつ、受給者の判断力が低下した場合でも安定した受給が可能な仕組みが必要とされており、企業や金融機関の取り組みが重要となっています。

また、これからの年金制度改革においては、年金制度への信頼を高めるための施策が重視されています。公的年金の財政検証の結果を一般にわかりやすく示すことや、企業年金の運営において透明性を確保し、受給者が安心して老後を迎えられる体制を整えることが求められています。このような信頼構築の取り組みは、年金制度全体への信頼感を醸成し、持続可能な年金制度の実現に向けた重要な要素となります。

以上のように、公私年金の連携は、各個人のライフステージに合わせて柔軟に運用することが求められ、若年層からの計画的な資産形成が奨励されています。特に、社会に出る前の年金教育の拡充や、企業における年金制度の充実、さらには政府による支援策の検討などが、今後の年金制度改革において重要な視点となります。

⇒ 詳しくは国立社会保障・人口問題研究所のWEBサイトへ

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