2024年8月18日
労務・人事ニュース
日本在住の外国人子供8,601人が不就学に、文科省が発表した調査結果
「外国人の子供の就学状況等調査(令和5年度)」の結果について(文科省)
令和6年8月8日に文部科学省が発表した調査結果によると、令和5年5月1日時点で日本に在住する外国人の子供のうち、不就学の可能性があると考えられる人数は8,601人にのぼることが明らかになりました。この調査は、外国人の子供の就学実態を全国的に把握し、全ての子供たちに教育機会を確保することを目的として、令和元年度から毎年実施されているものです。
今回の調査では、全国の市町村教育委員会を対象に行われ、住民基本台帳に基づく学齢相当の外国人の子供の人数は150,695人で、前回調査より10.1%増加しています。そのうち、義務教育諸学校や外国人学校に通っている子供の数は127,239人となり、残りの10,993人が不就学の可能性があるとされています。この不就学の子供たちの数は、前回調査と比較して5.1%の増加を示しており、依然として解決すべき課題であることが浮き彫りになりました。
この調査結果を受けて、文部科学省は今後の対応として、令和2年に策定された「外国人の子供の就学促進及び就学状況の把握等に関する指針」に基づき、地方公共団体が就学状況の把握や就学促進に向けた取り組みをさらに進める必要があるとしています。また、文部科学省の補助事業である「外国人の子供の就学促進事業」を活用し、地方公共団体が進める就学状況把握や就学促進の取り組みを引き続き推進する方針を示しました。
調査結果の中で特に注目すべき点は、学齢相当の外国人の子供の数が増加している一方で、不就学の可能性がある子供の数も増加している点です。この状況を踏まえ、各地方公共団体が積極的に就学状況の把握に努め、就学促進に向けた取り組みを強化することが求められています。特に、教育機会の提供が不十分な地域では、外国人の子供たちが適切な教育を受けられるよう、支援体制の整備が急務とされています。
今回の調査では、住民基本台帳に登録されている学齢相当の外国人の子供の数に対し、義務教育諸学校や外国人学校に通っていない子供たちの存在が確認されましたが、これには様々な要因が考えられます。例えば、転居や出国が予定されている子供、就学状況が把握できなかった子供、母国のオンライン教育を受けている子供などが含まれています。このため、調査結果の解釈には慎重さが求められますが、教育を受ける権利が全ての子供たちに保障されるよう、今後も継続的な調査と支援が必要です。
外国人の子供たちが日本の教育システムに円滑に適応し、将来的に社会に貢献できるようにするためには、学校や地域社会が協力して受け入れ態勢を整えることが重要です。文部科学省は、地方公共団体が取り組んでいる優れた事例を公表し、他の地域でも参考にされることを期待しています。こうした情報共有により、各地域が抱える課題を乗り越え、全ての外国人の子供たちが平等に教育を受けられる環境が整備されることが目指されています。
今回の調査は、外国人の子供たちが日本の教育システムに適応するために必要な施策を検討する上での貴重なデータを提供しています。このデータを基に、各地方公共団体は自らの地域の実情に合った対策を講じ、外国人の子供たちが教育を受ける機会を確保するための取り組みをさらに進めていくことが求められます。また、教育機関だけでなく、地域社会全体が協力して受け入れ環境を整備することが、外国人の子供たちの未来を開く鍵となるでしょう。
このように、外国人の子供たちの教育問題は、単なる学校の課題にとどまらず、社会全体の課題として捉える必要があります。特に、日本の労働市場においても、将来的に多様なバックグラウンドを持つ人材が増加することが予想される中で、彼らが適切な教育を受け、社会で活躍できるようにすることは、経済的な観点からも重要です。したがって、今回の調査結果を受けて、今後の政策策定においても、外国人の子供たちの教育機会の確保が優先されるべき課題であることが再確認されました。
この調査結果に基づき、文部科学省は引き続き、全国の教育委員会と連携し、外国人の子供たちが適切な教育を受けられるよう、政策の改善と支援の充実を図っていく予定です。地方公共団体が実施する具体的な取り組みや、その効果についても引き続きモニタリングし、必要に応じて改善策を講じることで、全ての子供たちに公平な教育機会を提供する社会を目指しています。
⇒ 詳しくは文部科学省のWEBサイトへ