労務・人事ニュース

  • TOP
  • お知らせ
  • 労務・人事ニュース
  • 日本版死亡データベースの導入で、地域拠点別の労働力維持戦略に活用可能

2025年5月18日

労務・人事ニュース

日本版死亡データベースの導入で、地域拠点別の労働力維持戦略に活用可能

Sponsored by 求人ボックス

日本版死亡データベース(社人研)

国立社会保障・人口問題研究所が提供する「日本版死亡データベース(Japanese Mortality Database)」は、国内外の死亡に関する研究を支えるための信頼性の高い統計基盤として位置づけられており、特に国際的な死亡データベースであるHuman Mortality Database(HMD)との整合性を意識して構築されています。このデータベースは単なる数字の集積ではなく、日本の長寿化社会における人口動態や健康寿命、地域間格差、死亡率の変遷といった、さまざまな人口学的課題を深く分析するために最適化された構造となっており、近年の高齢化の進展や社会保障制度の持続可能性に関心を持つ企業の採用担当者にとっても注目すべき情報源です。

このプロジェクトは、平成23年度から始まった人口問題プロジェクト研究「わが国の長寿化の要因と社会・経済に与える影響に関する人口学的研究」を皮切りに、複数年度にわたって継続されており、令和2年度以降は「超長寿社会における人口・経済・社会のモデリングと総合分析」として、より高度な分析と展望が加えられています。こうした長期的な研究体制の下で蓄積された死亡データは、単に統計的な意味を持つだけでなく、日本社会の今後の方向性を考える上で重要な示唆を含んでいます。

企業が新たな人材戦略を立案するうえで人口構造の変化は避けて通れない要素であり、特に平均寿命や死亡率の推移が示すトレンドは、中長期的な雇用政策や労働力確保の見通しにも直結します。たとえば、日本人の平均寿命は2023年時点で男性が81.05歳、女性が87.09歳と世界的に見ても非常に高い水準にありますが、この背景には医療技術の進展や生活環境の改善とともに、労働環境の変化も少なからず影響を及ぼしています。こうした長寿化の進展がもたらす経済的・社会的影響を企業としてどう捉え、制度や働き方に反映させていくかが問われています。

日本版死亡データベースのもう一つの特筆すべき点は、都道府県別に詳細な死亡データが提供されていることです。これにより地域ごとの死亡率や平均寿命の格差を可視化することが可能となり、企業が地域拠点の設置や採用戦略を検討する際の参考情報としても活用できます。たとえば、都道府県別の死亡率に着目すると、都市部と地方部で生活習慣や医療インフラの差が明確に反映されており、これは地域ごとの健康格差や就労可能年齢の持続性といった問題と直結します。企業が支店展開や地方採用を行う際には、こうした背景情報を把握しておくことが、より精度の高い人事計画の立案に役立ちます。

なお、日本版死亡データベースは、厚生労働省が発表する「公式生命表」とは基礎としている人口データや作成方法が異なっており、両者の数値が一致しない場合があります。そのため、死亡研究など学術的な精度を要する場面では本データベースの利用が適していますが、国の公式統計としての標準的な参照値を必要とする場合には、厚生労働省の公表する生命表の方が適しているとされています。つまり、目的に応じたデータの選択が必要であり、企業側でも人事政策や健康経営にかかわる資料を作成する際には、どのデータを基にするかを十分に考慮する必要があります。

現在、このデータベースは過去のデータ提供と並行して新たな推計手法の開発も行われており、将来的には提供データの内容がアップデートされる可能性があることにも留意する必要があります。これは、人口動態の分析において過去データの整合性と精度を保ちつつ、変化し続ける社会環境に即応した推計を行うことの重要性を物語っています。企業の採用担当者にとって、こうした信頼性と柔軟性を兼ね備えたデータベースの存在は、長期的な経営視点から人材マネジメントを検討する際の貴重なリソースとなります。

たとえば、高齢化が進展する中で、企業は定年延長や再雇用制度の見直しに直面していますが、長寿社会における働く意欲や健康寿命の実態を把握するためにも、死亡統計はその前提条件として理解しておくべき重要な要素です。平均寿命だけでなく、健康寿命や死亡率の年齢別推移、地域格差など、よりミクロな視点での情報活用が求められる時代において、日本版死亡データベースのような整備された統計資料は、単なる研究資料ではなく、企業経営における戦略的意思決定を支える基盤情報となり得るのです。

さらに、今後は高齢者の就労意欲や生活水準の変化に伴い、定年後のキャリア設計を見直す必要性が高まっており、人事部門ではそれに対応する仕組み作りが求められます。こうした動きは単なる人事制度の枠を超えて、企業文化や価値観の再構築にもつながる取り組みであり、その前提として国民の死亡動向に関する理解は欠かせません。企業が人材のライフサイクルを総合的に捉えるためにも、日本版死亡データベースの分析結果や推移データを参考にすることで、より実情に即した制度設計が可能となるでしょう。

このように、日本版死亡データベースは、死亡研究という専門領域にとどまらず、企業経営や人材戦略にも応用可能な価値ある情報源です。採用担当者にとっては、単なる採用活動の効率化だけでなく、将来の労働力確保と職場の多様性維持を見据えた長期的視野での人事施策を立案する際の一助として、本データベースを積極的に活用していくことが求められます。

⇒ 詳しくは国立社会保障・人口問題研究所のWEBサイトへ

パコラ通販ライフ