2024年11月11日
労務・人事ニュース
栃木県の雇用情勢分析:有効求人倍率1.15倍、医療・福祉分野で求人増加
「労働市場のようす(令和6年9月の求人・求職の取扱状況)」を発表します。(栃木労働局)
栃木県の労働市場に関する最新の動向について、令和6年9月時点での雇用情勢が詳細に報告されています。この報告から、求人倍率や求人数、新規求人に関するデータをもとに、雇用状況の改善や課題について考察することができます。
まず、栃木県の有効求人倍率(季節調整値)は1.15倍と、前月より0.01ポイント上昇しました。この数値は、県内における求人の総数が求職者数を上回っていることを示しており、就職希望者に対して複数の求人が存在することがわかります。全国順位で見ると、栃木県は第32位に位置しています。新規求人倍率は2.01倍で、前月から0.1ポイント低下しましたが、依然として全国平均を上回る高水準です。これらのデータは、県内の雇用市場が引き続き活発である一方で、新規求人の減少傾向が見られることを示しています。
業種別に見ると、特に建設業や製造業、運輸業・郵便業といった分野で新規求人の減少が目立ちます。例えば、建設業の新規求人は前年同月比で13.6%減少しており、2か月連続で減少傾向にあります。製造業でも同様に12.6%の減少が見られ、こちらも2か月連続の減少となっています。運輸業や郵便業に至っては、13か月連続で新規求人が前年を下回っており、11.7%の減少が報告されています。
一方で、医療・福祉分野では3か月連続で新規求人が増加しています。前年同月比で5.9%の増加を示しており、今後もこの分野での求人が続くことが予想されます。この増加は、高齢化社会の進展や医療・介護サービスの需要拡大に伴うものと考えられます。医療や福祉関連の求人の増加は、地域社会の基盤を支える重要な要素であり、この傾向は今後も続く可能性が高いといえます。
また、雇用保険の受給者数についても注目すべきデータがあります。令和6年9月時点で、雇用保険受給者実人員は6,958人と、前年同月比で6.4%増加しました。これに対して、雇用保険の受給資格決定件数は1,515件で、前年同月比で7.0%の減少が見られます。これらの数値は、雇用保険の受給者が増加している一方で、新たに受給資格を得る人が減少していることを示しており、これは雇用状況が一部で改善している可能性を示唆しています。
新規求人と新規求職者数の動きについても興味深いデータが報告されています。新規求人は13,278件で、前年同月比で10.3%の減少が見られました。一方で、新規求職者数は6,207人で、前年同月比で2.9%減少しています。これにより、新規求人倍率は前月比で低下しましたが、依然として2.01倍と高水準を維持しています。
さらに、有効求人に関しても分析が進められています。有効求人数は37,705件で、前年同月比5.1%減少しており、15か月連続で前年を下回る結果となりました。有効求職者数は32,567人で、こちらも前年同月比で5.8%の減少が見られます。この結果、有効求人倍率は若干の上昇を見せており、雇用市場の需給バランスが比較的良好であることがわかります。
ただし、正社員の求人倍率に注目すると、0.98倍となっており、前月より0.02ポイント上昇していますが、依然として1倍を下回っているため、正社員の求人に関しては引き続き需要に対する供給が不足していることがわかります。これは、非正規雇用の求人が依然として多いことを示しており、正規雇用の拡大が今後の課題として残されています。
このようなデータを基に、企業の採用担当者は今後の採用戦略を見直す必要があります。特に、建設業や製造業などの新規求人が減少傾向にある業種では、求人票の魅力を高める工夫が求められるでしょう。例えば、働きやすい職場環境の整備や柔軟な働き方の導入、スキルアップの機会提供など、求職者が魅力を感じる施策を講じることで、優秀な人材を確保できる可能性が高まります。
一方で、医療・福祉分野では、求人が増加しているため、労働条件の向上や職場環境の改善に加えて、地域社会に根ざした採用活動が重要となります。特に地方では、人材の定着率を高めるために、地域との結びつきを強化することが効果的です。また、企業全体で働き方改革を進めることで、労働市場全体の改善にも寄与できるでしょう。
最後に、新規求職者や雇用保険受給者の動きに注目することで、地域社会の雇用動向を把握することができます。今後も物価上昇や景気の変動が雇用に与える影響に注意を払いながら、企業や自治体が協力して持続可能な雇用環境の構築に努めることが重要です。
⇒ 詳しくは栃木労働局のWEBサイトへ