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2024年5月31日

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欧米の勤務間インターバル制度から見る日本の労働時間規制の未来 フランスの35時間労働制と11時間休息

諸外国における勤務間インターバル制度等の導入および運用状況に関する調査―フランス、ドイツ、イギリス、アメリカ―(JILPT)

独立行政法人 労働政策研究・研修機構(JILPT)は、フランス、ドイツ、イギリス、アメリカにおける勤務間インターバル制度の導入と運用状況についての調査を実施しました。この調査は、働き方改革関連法で努力義務とされている「勤務間インターバル制度」の義務化を見据え、その実態を把握することを目的としています。また、勤務間の休息を確保するために重要な「つながらない権利」についても調査しました。

今回の調査は、各国の法制度や運用状況を比較し、日本での法改正に向けた議論に役立てることを目的としています。欧州諸国においては、労働時間規制に基づき、労働者が一定の休息時間を確保できるよう義務づけられています。例えば、フランスでは1日の勤務後に11時間の休息が必要とされ、ドイツやイギリスでも同様の規制が設けられています。一方、アメリカでは労働時間の上限規制がなく、連邦レベルでの勤務間インターバル制度は存在しません。

フランスでは、勤務間のインターバル制度は1998年に導入され、1日11時間の休息が義務づけられています。また、1週間に24時間の休息も必要とされています。特例措置として、経営幹部やサービス業などの特定の職種には緩和が認められていますが、基本的には多くの労働者がこの規制に従っています。ドイツでも、同様に1日の勤務終了後に11時間の休息が必要とされ、例外的に病院や飲食業など特定の業種では休息時間の短縮が認められています。イギリスでは、EU労働時間指令に基づき、24時間あたり11時間以上の休息が必要とされ、これを順守することが義務づけられています。

一方、アメリカでは、労働時間の規制は存在するものの、勤務間のインターバルに関する具体的な規定はありません。連邦レベルでの法制化が行われていないため、州や地方自治体レベルでの規制も確認されていません。ただし、一部の職種については連邦労働省のガイドラインが存在し、連続した勤務時間や休息時間の基準が設けられています。

「つながらない権利」についても、フランスでは2017年に法制化され、従業員数50人以上の企業は労使交渉で権利行使方法を協議する義務がありますが、罰則は設けられていません。ドイツやイギリスでは法制化は進んでいないものの、労働組合を中心に制度化を求める動きが見られます。アメリカでは、ニューヨーク市議会での条例案が提出されましたが、経済団体の反対により成立には至っていません。

この調査結果は、日本での勤務間インターバル制度の法制化を検討する上で有益な参考資料となるでしょう。各国の取り組みを踏まえ、労働者の健康と安全を確保し、働き方改革を進めるための具体的な方策を議論することが求められます。

⇒ 詳しくは独立行政法人 労働政策研究・研修機構のWEBサイトへ