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2025年3月2日

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正社員不足57.7%!中小企業の採用戦略に求められる給与水準の見直しと労働環境の改善

中小企業の雇用・賃金に関する調査結果(日本公庫)

2024年10月から12月期に実施された「全国中小企業動向調査・中小企業編」の特別調査によると、多くの中小企業が給与水準を引き上げる動きを強めていることが明らかになった。特に正社員の給与水準を前年よりも上昇させた企業の割合は75.2%に達し、前回調査の68.0%から7.2ポイント増加した。この上昇の背景には、最低賃金の動向が最も大きな要因となっており、全体の24.9%の企業が最低賃金の影響を理由に挙げている。また、物価の上昇も同様に企業の賃上げを後押ししており、24.8%の企業がこれを理由としている。

一方で、企業の採用状況に関しては、2024年12月時点で正社員が「不足」と回答した企業の割合が57.7%となり、前回の58.8%から1.1ポイント低下した。「適正」と回答した企業は36.4%、「過剰」と回答した企業は5.9%となっている。業種別にみると、運送業(除水運)、建設業、宿泊・飲食サービス業などの分野で特に人手不足が深刻化していることがわかった。これらの業種では、新規採用の難しさや離職率の高さが課題となっており、今後の労働市場の動向が注視されている。

さらに、2024年12月時点で正社員数を前年と比較して「増加」させた企業の割合は23.6%、「減少」した企業の割合は24.7%となった。前回調査の「増加」割合25.3%からは1.7ポイントの低下が見られた。業種別に見ると、情報通信業、宿泊・飲食サービス業、運送業(除水運)などで正社員数の増加が目立つ一方、その他の業種では新規採用を控える動きも出ている。特に、賃上げを実施した企業の中には、採用活動を縮小して既存の従業員の待遇を改善する方向へシフトしているケースも多い。

こうした背景には、中小企業が直面する経済環境の変化がある。最低賃金の上昇により、企業は従業員の待遇を見直す必要に迫られている。また、物価上昇により従業員の生活コストが増加しており、給与水準の引き上げが不可欠となっている。しかし、その一方で人材の確保が依然として困難であることから、新規採用の抑制や既存の人材の定着を図るための施策が求められている。

今後の見通しとしては、中小企業における人手不足が続く可能性が高く、特に運送業や宿泊・飲食サービス業などの労働集約型の業種では深刻な影響が出ると考えられる。こうした業種では、給与水準の向上に加えて、労働環境の改善や労働時間の柔軟化などが求められるだろう。また、採用活動の効率化や、外国人労働者の活用といった対策も検討される可能性がある。

企業側にとっては、優秀な人材を確保し、長期的に定着させるための施策がますます重要になってくる。給与水準の引き上げだけでなく、福利厚生の充実やキャリアアップの機会を提供することが、今後の人材確保の鍵を握る。特に若年層の人材獲得には、企業の魅力をどのようにアピールするかが重要な課題となる。

今回の調査結果から、中小企業にとって「賃上げ」と「人材確保」のバランスをどのように取るかが、今後の成長に直結するポイントであることが明確になった。最低賃金の引き上げや物価上昇といった外部環境の変化に対応しながら、限られたリソースの中で従業員の満足度を高め、持続的な経営を実現することが求められるだろう。これからの採用市場では、給与や労働条件の改善だけでなく、働きやすい環境づくりや社員のモチベーション向上が一層重要になっていく。

⇒ 詳しくは日本政策金融公庫のWEBサイトへ

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