2024年12月26日
労務・人事ニュース
死因究明で明らかにされた令和5年度の870件通報と情報活用の全貌
令和6年版死因究明等推進白書 第8章 死因究明により得られた情報の活用及び遺族等に対する説明の促進(厚労省)
令和5年度における死因究明施策について、政府や関連機関が実施した取り組みを詳細に報告します。死因究明に関する情報の収集・活用は、国民の安全や健康を守るために重要な役割を果たしており、令和5年度も多岐にわたる施策が進められました。
警察と海上保安庁では、死因・身元調査法第9条に基づき、死因が他の被害を引き起こす恐れがある場合に関連行政機関に通報する制度を運用しました。この制度の下で、警察が通報を行った件数は令和5年度には870件と報告されており、これは前年度の2045件から減少しました。一方で、海上保安庁による通報は例年と同様、該当事例が発生しなかったことが明らかになっています。
厚生労働省は、解剖や死亡時画像診断に関する情報を共有・分析するためのデータベースを試験運用しました。このデータベースは、異状死の死因究明を支援する目的で、法的な指針や技術的課題を考慮しつつ構築されています。このような情報のデジタル化と標準化により、関係機関間での連携を強化し、迅速かつ正確な情報共有が期待されています。
また、子どもの死亡原因を多角的に検証し、予防可能な死亡を減らすための「子どもの死亡検証(CDR)」体制整備モデル事業も推進されました。この取り組みは、医療機関、警察、行政関係者などが協力し、子どもの死亡に至るまでの経緯や背景を詳細に分析するものです。令和2年度に10の自治体で開始されたこの事業は、令和6年度の予算1.2億円(国費全額負担)の下で継続されています。収集されたデータは、今後の政策提言や体制の拡充に役立てられています。
虐待による児童の死亡事例については、医療機関や大学の法医学教室などから関係機関への情報共有体制が整備されました。令和4年に改正された児童福祉法では、児童相談所が法医学教室と連携して情報を提供し、虐待事例の検証を円滑に行えるような制度が導入されています。この改正により、児童相談所と医学機関の連携が法的に明確化され、さらなる虐待防止策が講じられました。
遺族への説明については、犯罪捜査が行われたケースとそうでないケースでの対応が区分され、適切な配慮が求められています。犯罪捜査が行われた死体については、刑事訴訟法第47条を踏まえ、捜査の影響や第三者のプライバシーを保護しながら丁寧な説明が行われています。一方、犯罪捜査が行われていない場合には、遺族の要望に応じて書面を交付するなどして、遺族の理解を深める努力がなされています。
さらに、死亡診断書や死体検案書の記載内容に関するガイドラインも改訂され、遺族への丁寧な説明が推奨されています。厚生労働省は、医師がこれらの書類を作成する際の留意点をまとめたマニュアルを発行し、その周知を図っています。このマニュアルは、遺族の心情に配慮しつつ、正確な情報提供を目指したものです。
令和5年度のこれらの取り組みは、死因究明情報の活用だけでなく、遺族への配慮や連携体制の強化にも重点が置かれています。今後もこれらの施策が進化し、より効果的な社会基盤が構築されることが期待されます。
⇒ 詳しくは厚生労働省のWEBサイトへ