2024年12月25日
労務・人事ニュース
死因究明分野での人材育成、全国で展開中の教育プログラムとは
令和6年版死因究明等推進白書 第1章 死因究明等に係る人材の育成等(厚労省)
近年、死因究明の分野では、医師や歯科医師、法医学者の育成が大きな課題となっています。文部科学省や厚生労働省の主導のもと、複数の大学が連携して先進的な教育プログラムを提供し、専門性の高い人材を養成する取り組みが進められています。平成29年度以降、基礎研究医養成活性化プログラムの一環として、法医学や病理学などの基礎研究分野においてキャリアパスを構築する教育体制が構築されました。これまでに12の教育プログラムを通じて94名の大学院生を受け入れ、令和5年度末までにはさらに6つのプログラムで155名の大学院生が学んでいます。このような取り組みにより、日本国内の法医学教育の拠点が形成され、将来の人材育成が着実に進んでいます。
死因究明の教育では、各大学の特色ある取り組みが注目されています。たとえば、長崎大学では死因究明に関する高度専門職業人を養成するためのプロジェクトが進行中であり、東京医科歯科大学では法医学と法歯学を融合させた新たな学問分野を構築する試みが行われています。また、筑波大学では地域における基礎研究医育成プランが展開され、名古屋大学では人体を統合的に理解できる基礎研究医の養成が進められています。これらの取り組みは、単なる教育プログラムの枠を超え、地域や他大学との連携を深めながら、法医学分野全体の発展を目指しています。
さらに、死因究明の実務能力を高めるための研修も充実しています。厚生労働省の支援を受けて実施されている死体検案研修会では、一般臨床医を対象に基礎的な内容から専門的な実習まで幅広いプログラムが提供されています。令和5年度には基礎研修会で484名、上級研修会で73名が修了しました。このような研修を通じて、検案に関する知識と技術が向上し、死因究明体制の強化につながっています。
また、画像診断技術の向上も重要な課題です。死亡時画像診断の分野では、CTスキャンや放射線技術を駆使して死因を特定するための研修が進められています。令和5年度には、医師710名、診療放射線技師536名が研修を修了しました。特に小児死亡例における画像診断では、症例データの収集と分析が行われ、その知見が研修資料やeラーニングシステムに反映されています。これにより、画像診断を活用した精度の高い死因究明が可能となり、地域医療や公衆衛生の向上に寄与しています。
さらに、警察や海上保安庁も死因究明に積極的に関与しています。警察では、都道府県医師会や歯科医師会と連携した合同研修会を開催し、死体取扱業務や身元確認業務の能力向上を図っています。令和5年度には、35の都道府県で研修会が開催され、警察官や歯科医師が共同で作業する場が提供されました。一方、海上保安庁では、大学の法医学教室に職員を派遣して高度な知識と技術を習得させる研修が行われています。これにより、現場での鑑識業務や解剖への対応力が向上し、法医学的観点からの捜査が進化しています。
死因究明に関する教育や研修は、今後さらに重要性を増すと予想されます。社会の高齢化や多様化する犯罪形態に対応するため、法医学者や関連専門職の育成は不可欠です。大学や医療機関、警察、地方自治体が連携し、教育と実務の両面で質の向上を図ることで、日本の死因究明体制はより強固なものとなるでしょう。
⇒ 詳しくは厚生労働省のWEBサイトへ