2024年12月25日
労務・人事ニュース
死因究明推進計画が加速!全国で年間5,700件以上の検案実績
令和6年版死因究明等推進白書 第3章 死因究明等を行う専門的な機関の全国的な整備(厚労省)
令和5年度において、厚生労働省は死因究明に関する体制整備を進めるため、全国的な施策を展開しました。その背景には、近年増加する高齢化社会の進展に伴い、死因の調査や身元確認体制の重要性が高まっていることがあります。具体的には、都道府県単位での死因究明推進地方協議会の設置や、専門的な検案や解剖を担う機関の整備が求められています。この取り組みは、地域ごとの公衆衛生の向上や、災害時の迅速な対応を目的としています。
全国各地で進められている取り組みの中でも、大阪府の活動は特筆すべき成果を挙げています。令和5年3月に策定された「大阪府死因究明等推進計画」では、死因診断体制の整備や大規模災害時の身元確認体制の確立が明確な目標として掲げられました。この計画に基づき、大阪府監察医事務所では、5,700件以上の検案や2,000件以上の死亡時画像診断(CT検査)が実施されており、362件の解剖も行われました。この成果は、監察医事務所がCT車を導入するなど、技術的な進展によって実現したものです。
また、大阪府内では警察医や法医学教室との連携強化を図り、死因究明に必要な人材の育成が進められています。府内の医学系5大学と協力し、検査や解剖体制の充実を目指す取り組みも活発化しています。これにより、死亡診断書の作成や死因調査の質が向上し、地域医療と法医学の融合が進展しています。
他方、全国的には死因究明の取り組みを地域ごとに均てん化する必要性も指摘されています。特に、地域間での体制のばらつきや人材不足は大きな課題です。これを受けて、厚生労働省では「死因究明等推進計画」を推進する中で、各地域の現状に応じた施策形成を促進しています。この計画の一環として、地方協議会の設置マニュアルを作成し、地域における課題や対応策を具体的に示しました。これにより、地方協議会が実効性のある議論を行い、地域特有の問題に応じた解決策を模索することが期待されています。
さらに、警察や海上保安庁との協力も強化されており、大規模災害時の迅速な対応を可能にするための訓練が実施されています。これには、災害時における歯科所見を活用した身元確認が含まれており、警察庁と日本歯科医師会が協力して体制を整備しています。歯科医師の技能向上を目的とした研修も積極的に行われており、全国的な取り組みとして進展しています。
大阪府の具体的な活動を例に取ると、在宅での看取りが増加している現状に対応するため、臨床医向けの死因診断研修が実施されています。この研修では、救急医やかかりつけ医が死亡診断書を適切に作成するための知識を習得し、実際の業務に活用できるように支援しています。また、大阪市外での死因究明体制の均てん化を目指し、モデル地域での試行実施が行われ、その効果を検証した上で他地域への展開が進められています。
これらの取り組みを通じて、日本全体の死因究明体制が着実に強化されています。公衆衛生の向上や災害対応力の強化に加え、犯罪や事故の再発防止にも寄与するこれらの施策は、今後も継続的な改善が求められます。各地域が連携し、持続可能な死因究明の仕組みを確立することで、国民全体の安心と安全が守られる社会の実現が期待されています。
⇒ 詳しくは厚生労働省のWEBサイトへ