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2025年2月6日

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民間建築物のアスベスト飛散防止対策、全国調査結果が発表 – 96.2%が対応済み(令和5年度春季)

民間建築物における吹付けアスベスト等飛散防止対策に関する調査(令和5年度春季)の結果 ~飛散防止対策等の対応率が96.2%に~(国交省)

令和7年1月30日、住宅局建築指導課が全国の民間建築物における吹付けアスベストの飛散防止対策に関する最新調査結果を発表した。この調査は、昭和31年から平成元年までに施工された大規模(1,000平方メートル以上)の民間建築物を対象とし、令和5年度春季の建築物防災週間(3月1日~7日)に実施された。調査の結果、全国での飛散防止対策の対応率は96.2%に達し、前年調査時の95.6%から0.6ポイント上昇したことが明らかになった。

本調査では、地方公共団体が建築物所有者からの報告を収集する形式で進められた。調査対象建築物の総数は259,866棟であり、そのうち252,045棟(97.0%)から報告が得られた。報告の結果、237,109棟は最初の時点でアスベストの露出がないと確認され、14,936棟ではアスベストの吹付けが露出していた。露出が確認された建築物のうち、12,391棟は指導によりすでに対応済みであり、477棟が対応予定となっている。結果として、対策済みおよび対応予定を含めた対応率は96.2%に達した。

各都道府県ごとの対応率をみると、福井県(100.0%)、神奈川県(99.8%)、香川県(99.8%)などが高い水準を維持しており、一方で大阪府(93.8%)、沖縄県(93.3%)、東京都(87.1%)などは全国平均を下回る結果となった。東京都に関しては、特に未対応の建築物数が多く、引き続き指導が求められる状況である。

今回の調査結果を踏まえ、政府は未対応の建築物所有者に対して継続的な指導を行う方針を発表した。具体的には、吹付けアスベストの除去、封じ込め、囲い込みなどの対策を徹底するよう地方公共団体に要請する。また、報告のなかった所有者に対して追加調査を進めるとともに、次回の建築物防災週間において改善状況の公表を予定している。

さらに、民間建築物に対するアスベスト除去等の補助制度の創設状況も公開された。令和6年4月1日現在、47都道府県のうち16府県が補助制度を創設済みであり、11府県が融資などの支援策を設けている。一方で、補助制度創設の予定がない自治体も14府県に上り、地域によって対応に差があることが課題となっている。政令指定都市では、20都市のうち19都市(95.0%)が補助制度を設けており、対応が進んでいることが分かった。

また、平成18年から令和6年3月末までの国庫補助の実施状況も公表され、公共建築物15,811棟に対して約81.6億円、民間建築物6,891棟に対して約34.3億円の補助が実施されていることが判明した。加えて、データベース作成費や独立行政法人都市再生機構への補助を含めると、総額207.9億円の支援が行われている。

アスベストは長期間吸入することで健康被害を引き起こす可能性があり、国は2006年にアスベストの使用を全面禁止している。しかし、過去に施工された建築物には依然としてアスベストが残存しており、老朽化や改修工事の際に飛散リスクが生じることが懸念されている。そのため、今回の調査結果は建築業界や不動産業界にとって重要な指標となり、今後の対応計画を策定する上での指針となるだろう。

特に、建築物を所有する企業の採用担当者にとって、従業員の安全確保やオフィス環境の整備は重要な課題である。オフィスビルや商業施設にアスベストが含まれている場合、従業員の健康リスクを最小限に抑えるために、除去や封じ込めの対策を検討する必要がある。企業のブランドイメージを保ち、社会的責任を果たすためにも、適切な対応を講じることが求められる。

また、補助制度が活用できる場合は、コスト負担を軽減しながら安全対策を進めることができる。地方自治体ごとに異なる補助制度の内容を把握し、計画的な対策を講じることが推奨される。

今後も政府は、継続的な調査と指導を進めるとともに、補助制度の拡充や技術支援を通じてアスベスト対策を強化する方針を示している。特に、未対応の建築物の所有者に対して、早急な対応を求める動きが加速する可能性が高い。企業や個人の建物所有者は、こうした動向を注視しながら、適切な安全対策を実施することが求められる。

⇒ 詳しくは国土交通省のWEBサイトへ