2024年10月31日
労務・人事ニュース
沿岸地域の課題解決に挑む!海の次世代モビリティ実証実験が本格始動
海の次世代モビリティを用いた実証実験4件を選定しました! ~沿岸・離島地域の課題解決に向けた、海のドローンの社会実装の推進~(国交省)
令和6年10月21日、国土交通省総合政策局海洋政策課より、「海の次世代モビリティの利活用に関する実証事業」の一環として、沿岸および離島地域における課題解決に向けた新たな取り組みが発表されました。今回、4件の実証実験が選定され、これらは次世代のモビリティ技術を活用して、過疎化やインフラの老朽化、自然環境の劣化といった日本の沿岸・離島地域が直面する多くの課題に対応することを目指しています。この実証事業は、令和3年度からスタートし、さまざまな技術を社会実装するための実験を重ねてきました。令和6年度の今回の取り組みは、これまでの蓄積を踏まえ、さらに具体的な課題解決に向けた新しいステージに進んでいます。
選定された4件のプロジェクトは、それぞれが独自の技術を活用して、地域の問題を解決することを目指しています。例えば、株式会社宇部セントラルコンサルタントが主導するプロジェクトでは、小型無人ボート(ASV)を用いた有害赤潮の早期発見手法の実証実験が行われます。赤潮は、海洋環境に悪影響を及ぼし、漁業に大きな損害を与えることが知られています。特に山口県など瀬戸内海沿岸では、赤潮が水産業に深刻な被害をもたらしており、早期発見と迅速な対応が求められています。ASVに搭載されたセンサーがリアルタイムで水中のクロロフィル蛍光値を計測することで、有害プランクトンの増殖を迅速に捉え、漁業被害を最小限に抑えることが期待されています。
次に、九電ドローンサービス株式会社が手がけるプロジェクトでは、空海ドローンを活用して、カモと共存する地域社会をつくるための実証実験が行われます。佐賀県有明海沿岸の養殖海苔の産業は、秋から冬にかけて飛来するカモによる食害や羽毛の混入といった問題に直面しています。これに対し、水上ドローンと赤外線カメラを用いてカモの動きを調査し、効果的な誘導や防止策を検証する取り組みが進められています。実験では、カモの忌避行動を引き起こす音や光を活用しつつ、持続可能な農業と地域の共存を目指しています。
株式会社大歩が主導する実証実験では、自動航行型無人潜水機(AUV)と音響技術を組み合わせた沿岸漁場総合測定システムの実証が行われます。この技術は、AUVを用いて広範囲にわたる海底のデータを取得し、沿岸漁場の状況を総合的に把握するために開発されました。従来の方法では、天候や海況に左右され、十分なデータを得ることが困難でしたが、AUVの自動航行技術により、効率的かつ正確に漁場の情報を収集できるようになります。特に、底生生物の生息状況や海底地形、海洋環境の変化をリアルタイムで把握できるため、漁場の保全や持続的な活用に向けた貴重な情報が得られます。
最後に、炎重工株式会社による水陸両用ドローンを活用した沿岸部治水施設の点検実証実験があります。日本の沿岸地域では、台風や大雨などの自然災害が頻発し、治水施設の維持管理が重要な課題となっています。従来の点検方法は、手作業によるものが多く、効率性やコストの面で課題がありましたが、水陸両用ドローンの導入により、これらの課題を解決しようとしています。このドローンは、地上から水上まで移動でき、管渠(下水路)や水門などの劣化状況を撮影・記録します。将来的には、完全なリモート操作による点検を目指しており、携帯電話網を活用した遠隔操作や自動点検システムの構築が進められています。
これら4つのプロジェクトは、それぞれが地域の社会課題に対して具体的なソリューションを提供することを目指しています。ドローンや無人潜水機などの次世代モビリティ技術は、効率的な作業の実現や省人化を可能にし、海洋環境の保全や漁業の持続可能な発展にも寄与するものです。実証実験の成果は令和6年度末に公表され、今後の技術開発や社会実装の推進に向けた重要なステップとなります。
⇒ 詳しくは国土交通省のWEBサイトへ