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2025年2月7日

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海外事業の売上改善見込み34.4%、人材不足と経営戦略の見直しが課題

売上高増加・最終損益改善の割合は引き続き低下 ~「第14回取引先海外現地法人の業況調査報告」~(日本公庫)

日本政策金融公庫が実施した「第14回取引先海外現地法人の業況調査報告」によると、日本企業の海外事業展開において売上高や最終損益の改善が鈍化し、雇用や販売に関する課題がより顕著になっていることが明らかになった。今回の調査では、4,173社にアンケートを送付し、1,006社からの回答を得ており、2024年7月1日時点の最新データに基づいて分析が行われている。

調査結果によれば、前期決算期において売上高が「増加」と回答した企業の割合は36.4%と、前年調査の47.7%から大きく減少した。最終損益が「改善」と回答した企業の割合も36.8%と、前回の40.3%を下回っている。さらに、今期決算期の見通しについても、売上高が「増加」と見込む企業は34.4%、最終損益の改善を予測する企業は35.9%にとどまり、全体的に低下傾向が続いている。これにより、海外現地法人の経営環境が厳しさを増していることがうかがえる。

また、企業が直面している課題として、「賃金の上昇」が38.3%と最も高い割合を占めており、前回の39.8%からわずかに減少したものの、依然として大きな負担となっていることがわかる。一方で、「販売数量の減少」は28.6%と、前回の26.4%から上昇し、需要の低迷が懸念材料となっていることが示されている。「仕入原価の上昇」に関しては、23.4%と前回の32.1%から低下しており、原材料費の高騰が一定の落ち着きを見せていることがわかる。

今後3年程度の事業展開において有望視される国・地域としては、ベトナムが11年連続で1位となった。2位のインドとともに、成長市場としての期待が高まっており、「最も有望」と回答した企業の割合は前回より上昇している。タイやインドネシア、フィリピンといった東南アジア諸国のほか、アメリカやメキシコも有力な展開先として浮上している。

さらに、海外現地法人の現地責任者に関する調査では、「日本親会社から社員を派遣」するケースが最も多く、中国市場においては「現地採用(現地人・内部昇進)」が上位に挙げられた。しかし、現地責任者の後継者については、「決まっていない」との回答が80.0%を占めており、人材の確保・育成が今後の大きな課題となっている。特に、「経営を担える人材の育成」が58.4%、「経営を担える人材の採用」が45.2%と、高度なマネジメントスキルを持つ人材の確保が困難であることが浮き彫りとなった。

現地責任者の後継者が決まっていない理由としては、「現地責任者の変更予定がない」が62.9%を占めたが、「適任者が不在」と回答した企業も31.7%に上り、候補者の不足が深刻な課題となっている。一方で、後継者が決まっている企業では、「日本親会社から社員を派遣」が最も多く、ASEANや中国では「現地採用(現地人・内部昇進)」の割合が高いことが特徴的だった。

後継者候補の人材育成については、日本人向けの施策として「海外での実務経験(海外出張)」が42.6%、「海外での実務経験(海外駐在)」が32.7%と、実践を重視した研修が多く採用されている。現地人向けの育成では、「日本親会社の経営理念の浸透」が40.5%、「管理職への早期登用」が38.3%と、企業文化の定着やキャリアパスの明示が鍵となっていることがわかる。

これらの結果を踏まえると、日本企業の海外現地法人は、経営環境の厳しさが増す中で、売上や利益の改善が鈍化していることが明らかになった。特に、賃金上昇や販売数量の減少といった問題が企業経営の足かせとなっており、今後の成長戦略を立てる上での大きな課題となっている。また、人材の確保・育成が依然として困難な状況にあり、現地法人の責任者の選定や後継者の育成において、より戦略的なアプローチが求められる。

日本企業が今後の海外展開を成功させるためには、成長が見込まれる新興市場での事業拡大とともに、現地の労働市場や消費動向を的確に把握し、適応することが不可欠である。加えて、現地法人の経営を担う人材の育成と確保に向けた取り組みを強化し、長期的な成長を見据えた組織づくりを進めることが求められる。

⇒ 詳しくは日本政策金融公庫のWEBサイトへ