2024年8月16日
労務・人事ニュース
海運業界の平均年収が1,000万円突破、上場企業全体での賃上げ傾向
帝国データバンク「上場企業の「平均年間給与」動向調査(2023年度決算)」(2024年8月6日)
2023年度における上場企業の平均年間給与が651.4万円に達し、過去20年間で最高額を記録しました。この背景には、コロナ禍を経て本格的に再開した経済活動と、それに伴う人手不足の深刻化が影響しています。多くの企業が優秀な人材を確保するため、賃金の引き上げや待遇改善に取り組んでおり、その結果として給与水準が上昇しているのです。
特に、業績が好調な企業や業界では、積極的な賃上げが行われ、厚生労働省が発表した2023年の民間主要企業における平均賃上げ率である3.6%を上回る企業も少なくありません。実際に、全体の3割以上の上場企業がこの水準を超える賃上げを実施しており、企業全体での賃金引き上げの動きが加速していることが確認されています。
2024年度に向けては、物価上昇や経済全体の先行き不透明感が続く中、多くの企業が初任給の大幅な引き上げを実施する傾向が見られます。これに加え、パートやアルバイトを含めた時給の引き上げにも踏み切る企業が増加しており、待遇改善による人材確保の動きがさらに強まる見通しです。これにより、上場企業の2024年度の平均年間給与もさらに上昇することが予想されます。
今回の調査は、有価証券報告書に「平均年間給与」「従業員平均年齢」「勤続年数」のデータを記載している全上場企業を対象に行われました。持ち株会社や業種、社員数に関係なく、幅広い企業を対象とした結果、特に「東証プライム」上場企業では平均給与が700万円を超えるなど、全市場での最高額を記録しています。これらのデータは、企業規模や業種ごとの収益力の違いが給与水準に影響していることを示唆しています。
また、業界別に見ても、海運業が平均給与1,000万円を超えるなど、特定の業界では極めて高い給与水準が確認されています。これは、世界的な物流の回復や需要の増加に伴う業績の向上が要因とされています。こうした業界別の動向も、今後の給与水準の推移を考える上で重要なポイントとなるでしょう。
企業にとって、賃金の引き上げは単なるコスト増加ではなく、優秀な人材を引きつけ、企業の競争力を維持・強化するための戦略的な投資とも言えます。労働市場における競争が激化する中で、賃金や待遇の改善が求められる一方、企業の収益性や業績の改善も求められています。このバランスが取れるかどうかが、今後の日本企業の成長に大きく影響するでしょう。
今後の展望として、賃金上昇の動きはさらに強まると予測されますが、同時に企業の財務体質や経済状況の変化に応じた柔軟な対応が求められることになるでしょう。各企業がどのようにしてこの課題に取り組み、持続的な成長を実現するかが注目されるところです。
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