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2025年4月14日

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港湾サイバーセキュリティ対策を強化、5部構成で読み手別に対応したガイドライン改訂

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港湾分野における情報セキュリティ確保に係る安全ガイドライン(第2版)の公表 ~名古屋港におけるサイバー攻撃事案を受けた対策等を反映~(国交省)

令和7年3月28日、国土交通省港湾局は「港湾分野における情報セキュリティ確保に係る安全ガイドライン(第2版)」を正式に公表しました。これは、令和6年1月に発生した名古屋港のサイバー攻撃事案を受け、今後同様のリスクを未然に防ぐとともに、全国の港湾関係事業者の情報セキュリティレベルを底上げするために策定された改訂版となります。港湾は、物流の要所であり、日本の経済活動と国民生活を支えるインフラの中でも極めて重要な存在です。港湾における情報システムの機能停止や改ざんは、輸出入の滞りや経済的損失に直結し、ひいては国家の安全保障にも波及する重大な脅威となり得ます。そのため、今回のガイドライン改訂は、港湾分野のセキュリティ対策における実効性の高い施策として、産業界にとっても極めて注目すべき内容です。

名古屋港での事案では、コンテナターミナルの情報システムが外部からのサイバー攻撃を受け、複数日にわたり荷捌きや通関処理などの港湾業務が滞るという深刻な影響が生じました。この経験を踏まえ、国土交通省では同年11月より「コンテナターミナルにおける情報セキュリティ対策等検討委員会」を立ち上げ、有識者、港湾運送事業者、港湾管理者、関係省庁などの専門的知見を集約しながら、具体的な対策のとりまとめを進めてきました。その成果が今回の第2版ガイドラインに反映されており、より実効性を高める内容へと進化しています。

今回の改訂では、ガイドラインの構成自体も見直され、従来の包括的な文書形式から、読み手の立場に応じた分冊構成へと変更されています。導入編をはじめとして、経営者層向け、セキュリティ責任者向け、システム運用者向け、港湾管理者・運営会社向けの5編が用意されており、それぞれの読者が自らの役割に即した形で必要な対策を理解・実践できるよう配慮されています。特に経営者層向けには、情報セキュリティが単なる技術的課題ではなく、経営リスクそのものであるという認識を高めるための記述が充実しており、経営層によるリーダーシップの発揮を強く求める内容となっています。

また、港湾運送事業法との整合性についても明確化が図られました。これにより、事業者が港湾運送事業法に基づいて提出する事業計画の中に、サイバーセキュリティの観点が正しく盛り込まれるよう、ガイドラインとの連動性が強化されています。実際のシステム構築・運用にあたっての指針だけでなく、制度的な観点からの整理もなされており、事業者にとっては法令順守とセキュリティ強化を両立するうえで有用な資料となるでしょう。

さらに、今回の第2版では、付属資料として背景説明資料、リスク評価のためのチェックリスト、よくある質問(Q&A)、専門用語集、参考文献、事案事例集などが新たに追加されました。これらは、実際の導入時において関係者が必要とする補助的情報を網羅しており、現場レベルでの運用に直結する資料群として評価されています。特にチェックリストは、港湾事業者が自社のシステムや体制のセキュリティ対策状況を点検し、改善点を見つけ出すための有力なツールとなることが期待されます。

このように、ガイドラインは単なる理論書ではなく、現場で活用される実践的なマニュアルである点が最大の特徴です。特に港湾管理者や港湾運営会社など、システム管理に直接関与する立場にある企業・組織にとっては、今回の改訂を機に社内のセキュリティポリシーを再点検し、必要な予算措置や人材配置を行うことが求められます。さらに、実際のサイバー攻撃を想定した演習の実施や、インシデント発生時の初動対応手順の整備など、具体的な行動計画への落とし込みが重要です。

近年、重要インフラへのサイバー攻撃は国内外で急増しており、2023年には世界全体でランサムウェア被害が前年比30%以上増加したとの報告もあります。港湾分野においても、日本最大規模の名古屋港でさえ標的となり得ることが示されたことから、全国の中小港湾や関連事業者にとっても「他人事」では済まされない現実が突きつけられています。今回のガイドライン第2版の策定は、サイバーリスクが社会全体の課題であることを改めて認識し、業界全体で危機意識を共有する契機となるべきです。

企業の採用担当者にとっては、このような国の方針とガイドライン改訂の流れを把握し、自社の人材戦略に反映させることが重要です。特にセキュリティ人材や港湾ITシステムに関する専門技術者の確保・育成は、企業の持続的な成長と社会的信頼の確保に直結します。今回の改訂は、そうした採用方針や人材開発計画の見直しを進める上でも有益な手がかりとなるでしょう。

⇒ 詳しくは国土交通省のWEBサイトへ

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