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2024年11月27日

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無保険船舶による油濁リスクに対抗、新たな決議採択で補償制度を強化

国際油濁補償基金第29回総会等の結果概要 ~無保険かつ安全でない船舶によるリスク対応のための新たな決議及びガイダンスが採択されました~(国交省)

令和6年11月5日から8日にかけてロンドンで開催された国際油濁補償基金(IOPCF)第29回総会では、無保険で安全性が不足している船舶による油濁事故リスクへの対応が中心的な議題となり、新たな決議案とガイダンスが採択されました。この基金は、タンカー事故による油濁損害から被害者を迅速に保護することを目的とし、タンカーで運ばれた油を受け取る事業者の拠出金で運営されています。日本も主要な拠出国として積極的に関与しており、今次会合には日本政府関係者や業界団体も参加しました。

無保険かつ安全でない船舶による油濁事故の発生は近年増加傾向にあり、基金への負担や国際補償制度の信頼性に影響を及ぼしています。このような背景を受け、2024年4月の前回会合で日本が提案した決議案が今次会合で改訂され、採択されました。この決議では、関係者に対し関連条約の遵守や適切な保険加入を求めること、事故関係者を特定する内部手続きの整備やガイダンスの作成が盛り込まれています。

また、ロシア産原油への制裁措置である「オイル・プライス・キャップ制度」に伴い、制裁を回避する行動が増加しており、これが新たなリスク要因として認識されています。具体的には、船舶の位置情報を偽装したり、国際海域で危険な原油積み替えオペレーションを行う船舶群、いわゆる「Dark Fleet」の活動が増加しています。これにより、保険未加入や特定困難な油流出事故が発生しやすい状況が生じています。こうしたリスクの増大についても議論が行われ、全加盟国が条約の義務を遵守する重要性が強調されました。

さらに、紅海における商船攻撃による油流出のリスクも議題となりました。戦争や敵対行為による事故は、92年基金条約の免責事由に該当するため、基金は責任を負わないとされています。ただし、この地域での不安定な状況が油濁リスクを高めている点に懸念が示されました。日本は具体例として、2024年8月に紅海で発生したSounion号に対する攻撃を挙げ、事務局に引き続き注視を求めました。

総会では、基金に関連する15件の油濁事故についての進捗も報告されました。この中で、新たに認定されたMarine Honour号(シンガポール、2024年6月)およびTerra Nova号(フィリピン、2024年7月)について、基金からの補償開始が承認されました。また、翌年の拠出金請求として、60百万英ポンドを加盟国に要求することが決定されました。

このように、今回の総会では無保険や安全でない船舶によるリスクに加え、新たな制裁回避行動や地政学的リスクが国際油濁補償制度に与える影響について広範な議論が行われました。日本を含む加盟国は、これらの課題に対応するための制度強化や適切な保険制度の重要性を再認識し、今後の対応策を検討していくことになります。

⇒ 詳しくは国土交通省のWEBサイトへ