2024年8月28日
労務・人事ニュース
猛暑の影響で酒類業界が急回復、酒場DIが4カ月ぶりに44.4に上昇
帝国データバンク「酒類業界の最新景況レポート(2024年7月)」(2024年8月19日)
2024年8月19日に発表された帝国データバンクの最新調査によると、酒類業界の景況感が4カ月ぶりに改善しました。この改善の背景には、記録的な猛暑とそれに伴う季節需要、さらに夏のイベントが大きく影響していることが挙げられます。アルコール飲料の販売が好調で、特にビールを中心とした酒類の売上が増加しています。さらに、インバウンド需要の回復も業界全体にとって追い風となっています。
新型コロナウイルスの感染拡大による長期にわたる行動制限が解除されたことで、消費者のライフスタイルにも変化が生じました。「家飲み」の定着がその一例であり、健康志向や消費者の嗜好の多様化といったトレンドも、酒類業界に大きな影響を与えています。これにより、業界内の競争が激化する一方で、各社は新たな需要に応えるための取り組みを進めています。
帝国データバンクの毎月の調査に基づくと、酒場DI(景況感指数)は2020年の新型コロナウイルス感染拡大以降、悪化と改善を繰り返していました。しかし、2023年には5類移行の期待感が高まり、酒場DIは急激に回復。特に2023年3月には47.3を記録し、同年8月には52.3に達しました。しかし、その後は原材料の高騰や物流の課題が影響し、2024年に入ってからはやや停滞傾向にありました。それでも、2024年7月には猛暑の影響で酒場DIが44.4と前月比で4.4ポイント増加し、全産業の景気DI(43.8)を上回る結果となりました。
特にビヤホールや酒場では、夏の暑さが直接的な売上増につながっており、消費者が冷たいビールやカクテルを求める姿が見られました。これに対し、酒類メーカーからは「暑い日が続いたことで、飲料の売れ行きが非常に良い」といったポジティブな声が上がっています。しかし一方で、「売上がコロナ前の90%まで回復したが、消費の多様化により100%への回復は難しい」との慎重な見方も示されています。特に清酒製造業者からは、販売価格への転嫁が容易ではないことに対する懸念が聞かれます。
酒類業界全体の動向を見ると、大手4社が2024年の通年で増収を見込んでいることが明らかになっています。アサヒグループホールディングスやサントリーホールディングスなど、国内外での展開を強化する中で、特にビールの販売が好調です。アサヒグループHDは、2024年4月に東京・恵比寿に「ヱビスビール」のブランド体験施設をオープンし、新規顧客の獲得やブランドの強化に成功しました。その結果、ビールの販売数量は前年同期比で10%増加しています。
ただし、業界にはいくつかの課題も残されています。例えば、原材料価格の高騰や物流費の増加が利益を圧迫しています。また、「第3のビール」として知られる新ジャンルビールの販売数量の伸び悩みも課題となっています。特に、2024年に予定されている「物流の2024年問題」により、ドライバー不足が深刻化し、輸送費の高騰が懸念されています。このため、各社は鉄道や船舶を活用したモーダルシフトを進め、物流コストの削減に努めています。
さらに、日本国内の酒類消費は減少傾向にあるため、酒類メーカーは海外市場での成長を模索しています。財務省の「貿易統計」によれば、2023年の日本産酒類の輸出金額は約1,344億円に達し、これはコロナ前の2019年と比較して倍増しました。特にビールの輸出が好調で、韓国向けの輸出は前年同期比で35.2%増加しました。これは、日本のビールが海外市場でますます人気を集めていることを示しています。
このように、酒類業界は厳しい市場環境の中でも堅調な業績を維持しており、各社は多様化する消費者ニーズに対応するため、新たな戦略を展開しています。今後も、酒類業界の動向に注目が集まるとともに、各社の取り組みが業界全体に与える影響が期待されています。
⇒ 詳しくは帝国データバンクのWEBサイトへ