2025年3月11日
労務・人事ニュース
現金給与総額が37か月連続増加!平均295,505円の賃金上昇が企業の採用市場に与える影響とは?(毎月勤労統計調査 令和7年1月分結果速報)
毎月勤労統計調査 令和7年1月分結果速報(厚労省)
令和7年1月分の毎月勤労統計調査の速報によると、日本の賃金動向は引き続き上昇傾向にあるものの、実質賃金の低下が課題となっている。名目賃金である現金給与総額は、規模5人以上の事業所において平均295,505円となり、前年同月比2.8%増加した。これは37か月連続のプラス成長であり、雇用環境が依然として堅調であることを示している。また、規模30人以上の事業所では332,594円となり、前年同月比3.8%増の増加を記録し、47か月連続のプラスとなった。特に、定期的に支払われる「きまって支給する給与」は283,188円と3.2%増加し、これは32年10か月ぶりの高い伸び率となった。
所定内給与についても263,710円と3.1%増加しており、こちらも32年3か月ぶりの高い伸びを示している。一方で、特別に支払われた給与、すなわちボーナスや臨時手当は12,317円と前年同月比3.7%減少し、労働者の手取り収入にはばらつきが見られる。一般労働者に限定すると、現金給与総額は379,253円であり、前年同月比2.7%の増加を記録しており、46か月連続でプラスとなった。さらに、所定内給与に関しては335,435円となり、3.1%増加し、過去最高の伸び率を記録した。これは、基本給の上昇や労働環境の改善が進んでいることを示唆している。
パートタイム労働者の賃金についても注目すべき点がある。時間当たりの所定内給与は1,397円となり、前年同月比4.5%増と43か月連続でプラスの成長を続けている。これは、最低賃金の引き上げや、企業が人材確保のために賃金を上昇させていることが影響していると考えられる。しかしながら、実質賃金指数は令和2年平均を100とした場合、規模5人以上の事業所では82.0となり、前年同月比1.8%減少した。規模30人以上の事業所では80.5となり、前年同月比0.7%減少しており、5か月ぶりにマイナスに転じた。これは、消費者物価指数(持家の帰属家賃を除く総合)が前年同月比4.7%上昇したことによる影響とみられる。
物価上昇によって、名目賃金の増加分が実質的な購買力の向上につながっていないことが明らかになった。特に、賃金の上昇率と物価の上昇率の差が開いており、労働者の生活に与える影響は決して小さくない。この状況は企業の採用市場にも影響を及ぼすと考えられる。まず、パートタイム労働者の賃金上昇が続いていることから、サービス業や小売業において採用コストが上昇しており、人手不足の業界ではより高い時給を提示しなければならない状況が生じている。また、一般労働者の賃金が堅調に増加していることから、企業の給与水準を競争力のあるものに維持するための努力が求められる。
特に、成長産業においては、より良い待遇を求める労働者が増加する可能性があり、企業側は採用戦略を見直す必要がある。住宅市場では、実質賃金の低下が住宅購入意欲に影響を与え、住宅ローンの負担増が家計に重くのしかかる可能性がある。そのため、建設業界の採用市場にも影響が及ぶことが予想される。加えて、消費者の購買力の低下は、飲食業や小売業の売上に影響を与え、結果としてこれらの業界の採用意欲にも波及することが考えられる。
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