2025年3月11日
労務・人事ニュース
現金給与総額は347,994円(2.8%増)毎月勤労統計調査 令和6年分結果確報
毎月勤労統計調査 令和6年分結果確報(厚労省)
令和6年の毎月勤労統計調査によると、日本の雇用・賃金の動向には明確な変化が見られた。特に、現金給与総額は全体で347,994円となり、前年同月比で2.8%の増加が確認された。一般労働者に関しては、給与総額が453,256円で前年比3.2%の上昇、パートタイム労働者は111,901円で前年比3.9%増加した。特にパートタイム労働者の賃金上昇率が高く、時間当たり給与も1,343円と前年比4.3%増加しており、賃金改善の傾向が見て取れる。これは、最低賃金の引き上げや人手不足を背景に、企業がパートタイム労働者の待遇を改善していることを示唆している。
医療・福祉分野に注目すると、平均給与総額は310,560円で前年比2.9%の増加が見られた。一般労働者の給与総額は397,784円で前年比2.2%の上昇、パートタイム労働者の給与総額は134,822円で5.3%の増加となった。特別に支払われた給与(賞与など)は、全体で9.5%の増加と大きく伸びており、特にパートタイム労働者の賞与が前年比41.5%と大幅に上昇した。これは、医療・福祉分野においても非正規雇用の待遇改善が進んでいることを示している。政府の処遇改善加算制度や、介護報酬の見直しなどが影響していると考えられる。
一方で、労働時間に関しては、医療・福祉分野の総実労働時間は129.7時間で前年比0.5%の減少となった。所定内労働時間は124.7時間で前年比0.6%減、所定外労働時間(残業時間)は5.0時間で前年比0.8%の減少が見られた。これは、医療・介護分野における長時間労働の是正が徐々に進んでいることを示している。しかし、依然として過重労働の問題が完全に解決されたわけではなく、特に夜勤勤務やシフトの負担が課題となっている。政府は働き方改革の一環として、介護現場でのICT活用やロボット技術の導入を推進し、業務の効率化を進める方針を示しているが、現場レベルでの導入はまだ十分とは言えない。
出勤日数に関しては、医療・福祉分野では17.5日となり、前年と同じ水準を維持している。一般労働者の出勤日数は19.4日、パートタイム労働者は13.5日となった。パートタイム労働者の勤務日数が短いことは、ワークライフバランスの観点ではプラスに働くが、収入面では依然として課題が残る。特に、介護職のパート労働者はシフト制で働くため、安定的な収入を確保しにくい傾向がある。
医療・福祉分野における雇用環境についても、注目すべき点が多い。常用雇用者数は8,277千人で前年比0.7%の増加が確認された。しかし、パートタイム労働者の比率は33.18%とやや低下し、前年より0.42ポイント減少している。これは、非正規雇用から正規雇用への転換が進んでいる可能性を示しているが、一方でパートタイム労働者数自体が減少していることから、人材確保の難しさも浮き彫りになっている。介護業界では特に人手不足が深刻であり、外国人労働者の受け入れ拡大が進められているものの、定着率の向上が大きな課題となっている。
入職率は1.80%で前年比0.04ポイント減少し、離職率は1.70%で0.02ポイント減少した。つまり、新規採用よりも離職者の減少が若干上回っており、人材の定着率がわずかに改善していると考えられる。しかし、それでも年間で一定数の離職者が出ており、特に介護職の離職率は依然として高い水準にある。離職理由の多くは、給与の低さや労働環境の厳しさであり、これらを解決するためにはさらなる待遇改善が求められる。例えば、処遇改善加算の活用をより進めることで、賃金の底上げを図ることが重要である。
医療・福祉分野の労働環境は、今後の社会構造の変化と密接に関係している。少子高齢化の進行により、医療・介護サービスの需要はますます高まる一方で、労働力人口の減少により、現場の負担が増加することが懸念される。そのため、企業としては、長期的な人材確保の戦略を立てることが必要不可欠である。例えば、キャリアパスの明確化や、研修制度の充実によって、職員のスキルアップを支援し、働き続けやすい環境を整えることが求められる。また、テクノロジーの活用による業務効率化を進めることで、現場の負担軽減を図ることも重要である。
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