2024年9月13日
労務・人事ニュース
生活困窮者支援制度の成果、約27万人が就労・増収に成功
令和6年版厚生労働白書 第3章 自立した生活の実現と暮らしの安心確保(厚労省)
日本社会において少子高齢化や人口減少が進む中で、地域共生社会の実現が急務となっています。地域共生社会とは、地域住民が互いに支え合いながら、個々の生活や生きがいを共に創り上げていく社会を指します。このような社会の実現に向けて、2021年度から重層的支援体制整備事業が始まりました。この事業は、市町村が地域住民の多様なニーズに応えるために包括的な支援体制を構築することを目的としています。2022年度には134の市町村が、2023年度には189の市町村がこの事業を実施しました。
ひきこもり支援についても進展が見られ、2018年までに全都道府県にひきこもり地域支援センターが設置されました。また、2021年度には関係府省横断会議が開催され、各地での連携強化が図られています。さらに、2022年度には、市町村レベルでもセンターの設置が進み、支援者の研修が強化されました。2023年度には、研修内容がさらに充実し、ひきこもり支援に関わる中堅職員や指導的立場の支援者も対象となりました。また、地域住民のひきこもりに対する理解を深めるため、シンポジウムや全国キャラバン、ひきこもり支援ポータルサイトの開設など、普及啓発活動が展開されています。
消費生活協同組合(生協)は、地域の見守り活動や子育て支援など、地域コミュニティの形成に寄与しており、その役割はますます重要となっています。2021年には、生協が地域課題に取り組む組織に物品を供給できるよう規則が改正され、地域貢献の幅が広がりました。また、生協は災害時の支援活動にも積極的に取り組んでおり、令和6年の能登半島地震に際しても多くの支援が行われました。
地域生活定着促進事業は、刑務所や少年院を出所する際に福祉サービスが必要な高齢者や障害者に対して支援を行うもので、2009年度から実施されています。この事業では、矯正施設内での支援から退所後の福祉サービスへの連携までを一貫して支援し、地域生活への定着を図っています。また、2021年度からは被疑者や被告人に対する福祉サービスの利用調整も行われるようになり、支援の幅が広がっています。
成年後見制度は、認知症や知的障害を抱える人々の権利を守る重要な制度であり、その利用促進が進められています。2022年には、第二期成年後見制度利用促進基本計画が閣議決定され、地域連携ネットワークの強化や市民後見人の育成が進められています。これにより、認知症などで判断能力が低下した人々が安心して生活できる社会づくりが進んでいます。
社会福祉法人制度も改革が進み、公益性や非営利性の徹底、ガバナンスの強化が図られています。2017年には、財務諸表等の電子開示が始まり、全国の法人の透明性が向上しました。また、社会福祉法人間の連携を促進するための「社会福祉連携推進法人」制度が創設され、地域福祉の推進や経営基盤の強化が期待されています。
生活困窮者の自立支援に関しては、生活困窮者自立支援法に基づき、自立相談支援機関が全国で設置されています。2023年度には、新規相談者が約286万人に達し、自立支援計画の作成により継続的な支援を行った者は約73万人にのぼりました。これにより、約27万人が就労や増収に成功し、生活困窮状態の改善が着実に進んでいます。2023年度には物価高騰などに対応するため、支援体制の強化が図られ、民間団体への助成も行われました。
生活保護制度は、健康で文化的な最低限度の生活を保障する社会保障の最後のセーフティネットです。2024年2月時点で約202万人が生活保護を受給しており、保護率は1.63%です。受給者数は減少傾向にある一方で、受給世帯数は増加傾向にあり、特に高齢者世帯の割合が増加しています。
困難な問題を抱える女性への支援も重要な課題です。性暴力や家庭問題、生活困窮など、女性が抱える問題は多様化・複合化しており、その支援が強化されています。2022年には「困難な問題を抱える女性への支援に関する法律」が施行され、包括的な支援体制が整備されました。SNSを活用した相談窓口の開設やアウトリーチ支援が推進され、支援の充実が図られています。
自殺対策も引き続き強化されています。自殺者数は減少傾向にありますが、特に若年層の自殺者数が増加しており、2023年には小中高生の自殺者数が過去最多に達しました。この問題に対しては、関係省庁が連携して「こどもの自殺対策緊急強化プラン」を策定し、地域レベルでの支援体制が強化されています。
これらの取り組みは、いずれも地域社会の一体性を強化し、住民が安心して生活できる社会を築くために欠かせないものです。これからも、地域共生社会の実現に向けた努力が続けられることが期待されます。
⇒ 詳しくは厚生労働省のWEBサイトへ