2024年10月21日
労務・人事ニュース
生活習慣病予防を目指す日本人の食事摂取基準(2025年版)が示す具体的な栄養目標
日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書(厚労省)
「日本人の食事摂取基準(2025年版)」の策定に関する文書は、日本国民の健康増進と生活習慣病の予防を目指したガイドラインです。この基準は、厚生労働大臣が定めたもので、5年ごとに改定されており、2005年から継続的に実施されています。今回の2025年版の改定では、国民の健康に不可欠な栄養素の基準を設定し、最新の科学的知見を反映させた内容になっています。
この基準の主な目的は、健康寿命の延伸、生活習慣病の予防、生活機能の維持・向上を図ることです。具体的には、糖尿病や高血圧、脂質異常症、慢性腎臓病といった主要な生活習慣病の発症予防や重症化予防が掲げられています。また、骨粗鬆症やフレイル(高齢者の衰弱状態)に対してもエネルギー・栄養素との関連を整理し、健康維持のために重要な指標を設定しています。
今回の策定作業では、国内外の最新の研究や診療ガイドラインの改定内容を参考にしつつ、科学的にエビデンスを集積し、それに基づいて栄養政策を形成しました。例えば、エネルギーの過不足を回避するためにBMIを用いたエネルギー指標が導入されており、栄養素ごとに推奨される摂取量が定義されています。これらの基準は、国民全体の栄養摂取状況を標準化するための指標として活用され、管理栄養士や医師が栄養指導や食事管理に役立てることができます。
日本の社会が高齢化している現状を背景に、健康寿命の延長や生活習慣病の予防が重要な課題となっています。特に、高齢者の生活機能の維持や向上が求められており、フレイルや骨粗鬆症の予防にも注力しています。これに伴い、生活習慣病だけでなく、加齢に伴う疾患に対してもエネルギーや栄養素の適切な摂取を促進する必要があるとされています。
日本人の食事摂取基準は、健康な成人から高齢者、妊婦・授乳婦、乳児・小児まで、幅広い年齢層やライフステージに対応するように策定されています。例えば、妊婦や授乳婦に対しては、特に必要とされる栄養素やエネルギー量についても詳細に指摘されています。また、乳児や小児に対しても年齢ごとの成長に合わせた適切な栄養管理が必要です。
特に注目されるのは、生活習慣病予防のために設定された栄養素の「目標量」です。これらの目標量は、栄養素の摂取が生活習慣病の発症リスクと関連していることを示すエビデンスに基づいています。例えば、ナトリウム(食塩相当量)や飽和脂肪酸、食物繊維などが具体的に挙げられ、それぞれがどの程度の摂取量を目指すべきかが示されています。これにより、生活習慣病の発症リスクを低減し、健康的な生活を維持するための食事を推奨しています。
また、今回の改定では、アルコールに関しても新たな取り組みがなされており、炭水化物とは別に「エネルギー産生栄養素」として位置づけられました。これにより、アルコール摂取が栄養に与える影響についても、他のガイドラインと合わせて参照することが推奨されています。
一方で、摂取基準を実際に活用する際には、単にエネルギーや栄養素の量だけでなく、個々のライフスタイルや年齢、体格に応じた調整が必要です。例えば、身体活動レベルが異なる人々に対しては、同じエネルギー摂取量を推奨することはできません。そのため、性別や年齢、活動レベルごとに異なるエネルギー必要量が参考として示されています。
「日本人の食事摂取基準(2025年版)」は、単なる栄養指標ではなく、国民全体の健康を支える基盤として、今後の栄養政策や医療現場での実践においても重要な役割を果たしていくことが期待されています。特に、管理栄養士や医師が栄養指導に活用することで、生活習慣病の予防や重症化予防に寄与するとともに、健康寿命の延伸を図ることが目指されています。
⇒ 詳しくは厚生労働省のWEBサイトへ