2024年11月2日
労務・人事ニュース
短時間労働者の42.6%が雇用保険加入希望、主な理由は失業給付
雇用保険未適用である短時間労働者の実態に関する調査(JILPT)
2024年10月23日に公表された「雇用保険未適用である短時間労働者の実態に関する調査」は、主に週所定労働時間が20時間未満の労働者を対象として行われました。この調査の背景には、近年の働き方の多様化や、新型コロナウイルス感染症の影響が雇用形態に変化をもたらしていることがあります。また、女性や高齢者などの労働参加が進む中で、労働者を保護するためのセーフティネットとして、雇用保険の適用拡大の必要性が議論されています。2023年6月16日に閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針2023」でも、雇用保険の適用範囲の拡大が検討課題に盛り込まれたことから、今回の調査が実施されました。
調査は、15歳から74歳までの週所定労働時間が20時間未満で、雇用保険が適用されていない労働者を対象に、インターネットを通じて行われました。調査期間は2023年7月25日から8月16日までで、性別や年齢、就業時間などの要素に基づいて対象者が選ばれ、目標回収数は10,000件とされています。
調査結果から、現在の主な仕事で得た賃金の使い道について、「消費(生活上必須の物・サービス)」に充てている人が最も多く、全体の57.3%に上りました。続いて「貯蓄(預貯金)」が19.2%、「消費(趣味、娯楽)」が18.9%となっており、労働時間が異なっても基本的に生活に必要な出費が最も大きな割合を占めていることが明らかになっています。
また、現在の働き方を維持しながら雇用保険に加入することが可能であれば、加入したいかどうかを尋ねたところ、全体では42.6%が「加入したい」と回答しましたが、「加入したくない」と答えた人が57.4%と多数を占めています。週所定労働時間ごとのデータでは、例えば「週15時間以上20時間未満」の労働者では46.3%が加入を希望しており、働く時間が増えるにつれて加入希望者の割合が高くなる傾向が見られます。
雇用保険への加入を希望する理由については、複数回答が可能な質問に対して「失業給付が受けられるから」と答えた人が74.8%で最多でした。これは、短時間労働者にとって雇用の不安定さが大きな懸念材料であり、失業時のセーフティネットとして雇用保険の重要性を感じている人が多いことを示しています。次いで「生計維持のために働いているから」が25.1%、「雇用が不安定と感じているから」が23.3%と続いています。
一方で、雇用保険に加入したくない理由としては、「保険料の負担があるから」が45.9%と最も多く、次いで「加入する必要性を感じないから」が29.7%、「加入するメリットがわからないから」が23.3%と、多くの人が保険料の支払いに対する負担感や、制度の意義への理解不足を理由に挙げています。また、「雇用保険についてよく知らないから」と回答した人も16.8%に上っており、制度に対する認知度や理解度が必ずしも高くない現状が浮き彫りになっています。
今回の調査は、短時間労働者における雇用保険未適用の実態を把握し、今後の政策決定に役立てるために行われました。調査結果から見えてきたのは、短時間労働者の多くが生活必需品のために働いている一方で、雇用保険に対する認識や必要性に関しては意見が分かれているという現実です。今後、こうした調査結果を踏まえ、労働者の安全網を強化するための具体的な政策や制度改革が進むことが期待されています。