2024年9月27日
労務・人事ニュース
第11回ロボット大賞で注目のファナックM-800、精密加工の未来を切り拓く
第11回ロボット大賞が決定しました!(経産省)
2024年9月11日、経済産業省と一般社団法人日本機械工業連合会をはじめとする6省庁が共催する「第11回ロボット大賞」の受賞者が発表されました。このロボット大賞は、日本国内でのロボット技術のさらなる発展やその実用化を推進する目的で開催されています。先進的な技術を持つ企業や団体の取組を表彰するこの制度は、2006年に初めて実施され、その後隔年で開催されており、今回で11回目を迎えました。
本年度の審査は、2024年2月19日から4月12日までの応募期間中に寄せられた全85件の中から行われました。応募されたプロジェクトは、技術的な革新性や社会への貢献度、そして将来的な発展可能性など、さまざまな観点から厳正に審査されました。審査は立命館大学の川村貞夫教授を委員長とする「ロボット大賞審査特別委員会」によって行われ、その結果、ファナック株式会社と株式会社ハーモテックがそれぞれ主要な賞を受賞しました。
まず、経済産業大臣賞に輝いたのは、ファナック株式会社の「世界最小の大型加工機 高精度本格加工ロボット M-800」です。このロボットは、従来の加工機では難しかった高精度な加工を実現する技術を備えた6軸多関節ロボットであり、60kgという可搬重量にもかかわらず、大きな加工反力に耐えられる高剛性アームを搭載しています。これにより、切削加工、穴あけ、面加工といった精密な作業が可能となり、自動車や航空機の部品製造においてもすでに使用され始めています。また、特筆すべきは、ロボット自体が非常にコンパクトで、省スペースで設置できる点です。この点が、導入コストの削減につながるだけでなく、様々な製造現場において多くの用途に応じた柔軟な対応を可能にしています。
このM-800の評価ポイントは、世界でもトップクラスの技術力を背景に、非常に高い剛性と絶対精度を実現していることです。±0.1mm以下という精度での加工を可能にし、レーザ切断やウォータジェット加工など、多様な加工作業においてもその高い精度を維持できることが特徴です。このため、自動車産業や航空機産業における利用が進んでおり、今後の活用範囲の拡大が期待されています。さらに、このロボット技術は他の分野にも応用可能であり、その横展開による波及効果も大きいとされています。
一方で、中小企業庁長官賞を受賞したのは、株式会社ハーモテックの「KUMADE-FORK(ECシリーズ)」です。このロボットは、ベルヌーイ方式やエジェクター技術を複合的に活用し、極薄のウェハなどの脆弱な材料を非接触で搬送することを可能にした技術を採用しています。特に、次世代パワー半導体の製造において、高精度で安全な搬送を実現し、大手企業にも採用されていることが評価されました。ECシリーズは、ウェハが反ったり撓んだりする場合にも対応できる点が革新的であり、ウェハの裏返しや非接触での固定が可能です。この技術により、製造過程での損傷リスクを大幅に軽減し、さらに消耗部品を使用しないため、ランニングコストの低減にも寄与しています。
ハーモテックの技術の特筆すべき点は、その応用範囲の広さです。半導体製造分野だけでなく、食品業界などでも、脆弱な製品を傷つけずに搬送する技術として実証されており、今後の自動化分野におけるさらなる展開が期待されています。特に、脱炭素社会の実現に向けた取り組みが進む中、次世代のエネルギー効率の高いパワー半導体製造に欠かせない技術として、その重要性は今後ますます増していくでしょう。加えて、この技術はすでに特許が実用化されており、AIやIoTが牽引する今後の半導体市場拡大にも大きく寄与することが見込まれています。
第11回ロボット大賞の表彰式は、2024年9月18日、東京ビッグサイトで開催される「Japan Robot Week 2024」の一環として行われました。このイベントは、ロボット技術の最前線を紹介する場であり、表彰式の後には、受賞したロボットたちが一般に公開される展示も行われる予定です。展示は9月18日から20日までの3日間にわたり開催され、最先端の技術に興味を持つ来場者にとって、革新を体感できる貴重な機会になったのではないかと思われます。技術開発に携わる関係者だけでなく、一般の方々も最先端のロボット技術に触れることができるこのイベントは、ロボット産業の未来を見据えた意義深い場となるでしょう。
また、Japan Robot Weekは、ロボット関連技術や製品の展示、最新の技術動向や市場の動きを学ぶためのセミナーなど、幅広い内容が企画されています。国内外のロボット技術に関心のある企業や研究者にとって、最新情報を入手し、ネットワークを広げる絶好の機会となるでしょう。
ロボット大賞は、これまでの技術の進展を振り返りつつ、次世代のロボット技術がどのように社会に貢献し、変革をもたらすかを示す重要なプラットフォームです。今後も多くの分野でロボット技術の応用が進み、社会のさまざまな課題に対して、ロボットがどのような解決策を提供できるのか、その可能性が注目されることは間違いありません。ロボット大賞を通じて表彰された技術は、今後も多くの業界で活躍し、私たちの日常生活や産業構造に大きな変革をもたらすことでしょう。
⇒ 詳しくは経済産業省のWEBサイトへ