2024年9月14日
労務・人事ニュース
約80%が「健康」と評価、しかし30代〜40代の心の健康に課題あり—3,024人の調査結果から見る日本社会の現状
令和5年度「少子高齢社会等調査検討事業」の報告書を公表します(厚労省)
令和5年度の少子高齢社会等調査検討事業に関する報告書は、厚生労働省が委託した調査の結果をまとめたものです。本調査は、少子高齢化と人口減少が進む中で、国民が心身の健康を保ちながら社会で活躍できるようにすることを目的としています。そのため、現代社会における「こころの不調」に対する意識や理解を調査し、厚生労働白書や今後の政策検討の基礎資料とするために実施されました。
現代の日本では、社会・産業構造の変化に伴い、ストレスや不安感から「こころの不調」を抱える人が増えています。この「こころの不調」は、誰にでも起こり得るものであり、その認識が社会に浸透していくことが重要です。また、早期発見と早期治療が回復において重要であることから、自己認識を促し、必要な支援を早期に求められる環境の整備が求められています。しかし、調査によると、「こころの不調」に対する偏見が残っていることや、援助を求めにくい現状が依然として存在していることが示唆されています。
調査は、2024年1月26日から1月30日にかけて実施され、全国7ブロックの地域区分に基づき、各地域から均等にサンプルが集められました。最終的に3024件の回答が回収され、調査結果は性別、年齢、居住地、職業、婚姻状態などの属性ごとに分析されました。
調査結果によると、回答者の約81%が総合的な健康状態を「よい」「まあよい」「ふつう」と評価しており、年代別では20代が最も高い割合で健康と感じていました。健康状態を評価する際に重視した事項としては、「病気がないこと」が最も多く挙げられ、次いで「美味しく飲食できること」や「ぐっすりと眠れること」が続きました。また、健康にとってのリスク要因としては、「生活習慣病を引き起こす生活習慣」が最も高く、次いで「精神病を引き起こすようなストレス」や「加齢や遺伝」が挙げられました。
こころの健康に関する意識では、回答者の約81%が自分のこころの健康を「よい」「まあよい」「ふつう」と評価していましたが、特に30代から40代ではやや低い傾向が見られました。また、ストレスや不安感については、約57%が「まったくない」「時々ある」と回答しており、約23%は「ある、またはかなりあるが、特に何もしていない」としていました。ストレスや不安感への対処としては、「自分なりの症状緩和措置をとっている」「市販薬を利用する」「病院にかかっている」と回答した人が約20%いました。
不安感の主な原因としては「体力の衰え」が最も多く挙げられ、次いで「経済的な問題」や「仕事上の人間関係」が挙げられました。特に経済的な問題は、どの世代でも主な不安感の原因の一つとされており、20代から50代では「仕事上の人間関係」も大きな不安要因として挙げられていました。
さらに、こころの健康状態別にみると、こころの健康状態が「あまりよくない」「よくない」と感じている人の主な不安感の原因は「経済的な問題」であることが明らかになりました。一方、こころの健康状態が「よい」「まあよい」と感じている人たちの主な不安感の原因は「体力の衰え」でした。
また、周囲の人間関係がこころの健康に与える影響についても調査され、最も良い影響を与えているのは「同居の家族」であることが分かりました。特に年代が上がるにつれて、この影響は強くなる傾向がありました。同居人がいない単身者では、孤独感を感じる割合が高く、特に「しばしばある・常にある」と感じる人が多いことが示されました。
これらの調査結果は、今後の政策策定や支援体制の整備において、こころの健康への理解を深めるための重要な基礎資料となります。特に、こころの不調に対する早期発見と早期治療の重要性を広く周知し、支援を求めやすい社会の構築が求められます。また、経済的な問題や人間関係のストレスに対する支援策も検討する必要があります。
⇒ 詳しくは厚生労働省のWEBサイトへ