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2024年10月8日

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結婚行動の未来予測!未婚率50%超の時代が到来?ライフコース指標で見る未来の結婚事情

『人口問題研究』第80巻第3号を掲載しました。(社人研)

日本における結婚行動の変遷は、長期的な視点から見ると大きな変化を遂げており、これを明らかにするために多相生命表アプローチを用いた分析が重要な役割を果たしています。結婚は個人のライフコースにおいて非常に重要なイベントであり、時代ごとの社会的、経済的背景が結婚行動に大きな影響を与えてきました。本研究では、1980年から2021年までの現代人口を対象に、さらに18〜19世紀の東北農村における結婚行動、そして2021年以降の将来人口を見据えた分析を行っています。これらの分析によって、日本における結婚行動がどのように変遷してきたか、また将来的にどのように変わっていく可能性があるのかを明らかにしようとしています。

多相生命表は、従来の生命表とは異なり、個人が経験する複数の状態を同時に扱い、その状態間の遷移や死亡リスクを計算することができるツールです。従来の生命表は主に生存と死亡という2つの状態しか考慮していませんが、多相生命表ではこれに加えて未婚、結婚、離別、死別などの複数の状態を扱い、その状態間の遷移を時間の経過とともに追跡します。これにより、結婚や離婚、死別といったイベントが個人のライフコースに与える影響をより詳細に理解することができます。

本研究では、1980年から2021年にかけてのデータを用いて、日本人の結婚行動がどのように変化したかを分析しています。具体的には、未婚者が初婚に至る確率や、結婚後に離婚や再婚、配偶者の死別といった状態の変化がどのように進行するかを示すライフコース指標を計算しています。これらの指標を用いることで、結婚行動の変遷やその要因を明確に把握することが可能となります。

例えば、1980年から2021年にかけて、日本では未婚率が大幅に上昇しており、特に女性の初婚年齢が顕著に上昇していることがわかりました。1980年代には、女性の平均初婚年齢は約25歳でしたが、2021年には30歳近くまで上昇しています。これは、社会的・経済的要因や教育水準の向上、女性の労働市場への参加が進んだことなど、複数の要因が影響していると考えられます。また、男性の初婚年齢も同様に上昇しており、1980年代には約28歳であったものが、2021年には31歳を超える状況となっています。

さらに、離婚率もこの期間中に大きく変化しています。1980年代には離婚は比較的稀なものでしたが、2000年代以降、離婚率は急激に上昇しました。これにより、離別状態の割合が増加しており、離婚後に再婚する人の割合もまた注目すべき変化を示しています。特に、再婚率は男女ともに緩やかに低下していることがわかっており、再婚に対する社会的な態度や個人の価値観の変化が影響していると考えられます。

歴史的な視点から見ると、18〜19世紀の東北農村における結婚行動も現代とは大きく異なっていました。当時は結婚年齢が現在よりも大幅に低く、男性も女性も20代前半で結婚することが一般的でした。これは、当時の農村社会における家族の経済的な必要性や、社会的な慣習が影響していたと考えられます。また、結婚後の離婚率は非常に低く、死別が配偶関係の解消の主な要因であったことも示されています。これに対して、現代では離婚が結婚生活の解消における重要な要因となっており、過去の結婚行動とは大きく異なることがわかります。

本研究のもう一つの重要な側面は、将来人口における結婚行動の予測です。2021年以降の将来人口に基づくシミュレーションでは、未婚率がさらに上昇し続けると予測されています。特に、現在の若年層においては、結婚を選択しない人々の割合が増加しており、この傾向は今後数十年にわたって続くと考えられます。また、少子高齢化が進む中で、結婚や家庭の形態も変化していくことが予想され、これに対応した新しい社会政策が必要とされています。

結婚行動の変化は、単に個人のライフコースにとどまらず、社会全体に大きな影響を与えます。例えば、結婚の遅れや未婚率の上昇は、出生率の低下に直結し、これが将来的な人口減少や高齢化の加速に繋がります。また、離婚や再婚が増加することで、家族の形態が多様化し、これに伴う社会的な支援のニーズも変化していくでしょう。これらの変化に対応するためには、現代の結婚行動を理解し、その予測を基にした政策立案が不可欠です。

本研究は、日本における結婚行動の変遷を長期的な視点から捉え、過去・現在・未来を通じて比較可能な形でその変化を分析しています。このような研究は、人口政策や社会保障制度の策定において非常に重要であり、特に少子化対策や家族支援策の充実に役立つと考えられます。また、結婚行動の変化を理解することは、企業の採用担当者にとっても重要です。結婚や家庭の形態が変わることで、労働市場や福利厚生のあり方にも影響を与えるため、これらの変化を踏まえた対応が求められるでしょう。

⇒ 詳しくは国立社会保障・人口問題研究所のWEBサイトへ

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