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2024年8月30日

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自動車運転者の82.2%が法令違反!令和5年の監督指導結果で明らかになった3,049事業場

労働基準監督署等が自動車運転者を使用する事業場に対して行った令和5年の監督指導、送検等の状況を公表します(厚労省)

令和5年、全国の労働基準監督署等が自動車運転者を使用する事業場に対して実施した監督指導や送検の状況が、厚生労働省によって公表されました。これは、トラックやバス、タクシーなどを運行する事業場において、労働基準法や関連する法令の遵守状況を確認し、適切な労働環境の確保を図るための重要な措置です。今回の発表は、自動車運転者の過酷な労働条件や法令違反の実態を浮き彫りにするものであり、今後の改善に向けた指針を示しています。

令和5年に実施された監督指導の対象となった事業場数は、全国で3,711件にのぼります。このうち、82.2%にあたる3,049件の事業場で労働基準関係法令に違反していることが確認されました。この数値は、自動車運転者が従事する業界において、依然として多くの事業場が法令を遵守していない現状を示しています。また、改善基準告示に違反していた事業場は1,999件で、全体の53.9%を占めています。

主な法令違反としては、労働時間の超過が最も多く、全体の46.9%を占めています。具体的には、長時間の労働が常態化している事例が多く、労働者の健康と安全に対するリスクが懸念されています。割増賃金の不払いも21.2%にのぼり、労働者に対する適正な報酬が支払われていないケースが見られます。また、労働時間の適切な把握が行われていない事業場も8.0%あり、労働者の労働時間が適切に管理されていないことが問題視されています。

改善基準告示に関しては、最大拘束時間の超過が39.2%、総拘束時間の超過が30.7%、休息期間の不備が28.1%となっています。これらの違反は、労働者が必要な休息を取れない状況を招き、過労や事故のリスクを高める要因となっています。特に、トラック運転者に対しては、1か月の総拘束時間や1日の最大拘束時間を超える労働が行われている事例が多く報告されており、改善が急務とされています。

さらに、重大かつ悪質な法令違反として送検されたケースは54件にのぼります。その内訳を見ると、トラック業界での送検が45件と最も多く、長時間労働や休息時間の不備が深刻な問題となっています。バス業界では5件、タクシー業界では1件の送検が報告されており、これらの業界でも法令違反が常態化している状況が明らかになりました。

具体的な事例として、あるトラック運転者が、36協定で定められた延長時間を大幅に超えて時間外労働を行わせられていたケースが挙げられます。この運転者は、1か月で最大152時間の時間外労働を強いられており、さらに改善基準告示に反する拘束時間の超過や休息期間の不備も確認されました。このような状況が改善されずに続いていたため、事業場は送検されるに至りました。

また、バス業界においては、コミュニティバスの運転者が過度な時間外労働を行わされていた事例が報告されています。この運転者は1か月で最大132時間の違法な時間外労働を行っており、さらに時間外・休日労働の通知が行われていなかったことが問題となりました。監督指導の結果、当該事業場には是正勧告が出され、労働環境の改善が求められました。

タクシー業界でも、累進歩合制度の問題が指摘されました。この制度は、運賃収入に応じて労働者の賃金が非連続的に増減する仕組みであり、長時間労働やスピード違反を誘発するリスクがあるとされています。実際に、累進歩合制度が採用されていた事業場において、法定の年次有給休暇の取得が適切に行われていなかったため、労働基準法違反として是正勧告が出されました。結果として、この事業場では累進歩合制度が廃止され、新たな賃金体系が導入されました。

これらの事例からもわかるように、自動車運転者を使用する事業場においては、依然として労働基準法や関連法令の遵守が十分に行われていないケースが多く存在しています。厚生労働省は、今後も監督指導を強化し、労働者の健康と安全を守るための取り組みを継続していく方針です。特に、トラック運転者の長時間労働を是正するために設置された「荷主特別対策チーム」は、発着荷主に対して長時間の荷待ちが発生しないよう要請するなど、具体的な改善策を講じています。

このように、自動車運転者の労働環境の改善に向けた取り組みは進展しているものの、依然として多くの課題が残されています。労働基準監督署や関連機関が引き続き厳格な監視と指導を行うことで、労働者の権利が守られ、安全で健全な労働環境が確保されることが期待されています。

⇒ 詳しくは厚生労働省のWEBサイトへ

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