2025年3月14日
労務・人事ニュース
自動配送ロボットの市場拡大!2030年までに普及率50%を目指す
自動配送ロボットの将来像を取りまとめました(経産省)
経済産業省は、物流業界が直面する人手不足や配送効率の向上を目的に、自動配送ロボットの社会実装を推進している。2023年4月に改正道路交通法が施行され、低速・小型の自動配送ロボットが公道を走行できるようになったことで、日本国内におけるロボット配送の可能性が広がった。しかし、海外ではより高い配送能力を持つロボットが活用され始めており、日本でも今後の物流課題に対応するためには、さらに大型で高速な自動配送ロボットの導入が不可欠とされている。
こうした背景を受け、2024年7月に経済産業省と国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が中心となり、「より配送能力の高い自動配送ロボットの社会実装検討ワーキング・グループ」を設立した。このワーキング・グループでは、有識者や物流業界の関係者とともに、今後の自動配送ロボットの活用について議論を重ね、社会実装に向けたロードマップを取りまとめた。議論の中心となったのは、期待されるユースケース、産業界が求めるロボットの仕様と運用、社会実装のためのロードマップの三つの観点である。
まず、期待されるユースケースとして、個人宅などへの配送、移動販売、企業間のB2B搬送の三つの主要な活用方法が示された。低速・小型のロボットに比べて速度と積載能力が向上すれば、より多くの商品を効率的に運ぶことが可能となる。その結果、一件あたりの配送時間を短縮し、宅配便の多頻度小口配送の効率化が期待される。また、無人移動店舗としての機能を備えたロボットが登場すれば、消費者が必要な商品を好きな場所で購入できる仕組みが整うことになる。さらに、企業間物流においても、中速・中型のロボットを活用することで、工場や倉庫間の資材搬送がよりスムーズになる可能性が高い。
こうしたユースケースを実現するためには、ロボットの仕様や運用の基準を明確にする必要がある。産業界からの意見を集約した結果、特に公道を走行する際のルールを定めることが重要であるとされた。例えば、中速・中型ロボットについては、軽自動車よりも小型の機体が、最高速度時速20kmで道路の左側を走行するという仮説が提示された。また、安全性の確保と既存の交通インフラとの調和を図るため、関係省庁や自治体と協議を重ねながら、ロボットの運用ルールを整備することが求められる。
社会実装に向けたロードマップにおいては、まず直近3年間を「集中的な実証実験期間」と位置付けた。この期間中に産業界各社が実際にロボットを活用した配送実験を行い、技術的な課題や運用上の問題を洗い出す。その結果を踏まえ、関係省庁や自治体との協議を進め、実際の運用に向けた基準の精緻化を行う方針が示された。さらに、ロードマップでは、自動配送ロボットの普及に向けた社会的な受容性の向上も重要な要素として挙げられた。新たなモビリティ技術が普及するためには、社会全体の理解と協力が不可欠であるため、企業や自治体による広報活動や啓発イベントの開催が必要になる。
こうした取り組みの一環として、経済産業省と一般社団法人ロボットデリバリー協会は、メディア向け取材イベントを開催した。このイベントでは、実際に自動配送ロボットが走行する様子を公開し、配送技術の現状や将来的な可能性について説明が行われた。イベントには加藤経済産業大臣政務官も出席し、ロボットが荷物を配送するデモンストレーションを視察した。イベントに登場したのは、中速・中型ロボットと中速・小型ロボットであり、それぞれがどのように走行し、荷物を届けるのかを実際に確認する機会が提供された。
ただし、現在の国内規制では、中速・中型ロボットや中速・小型ロボットの明確な定義が存在しない。今回のイベントで披露されたロボットも、海外の実績を基に設計されたものであり、日本国内での公道走行が許可されているわけではない。今後の社会実装に向けては、こうした規制の整備が不可欠となる。技術的な進化と法整備が並行して進められることで、自動配送ロボットが現実の物流網に組み込まれる日が近づくことになるだろう。
経済産業省は、今後もロボットデリバリー協会をはじめとする産業界や自治体、関係省庁と連携しながら、自動配送ロボットの社会実装を推進していく方針である。特に物流業界では、2024年以降も人手不足が深刻化すると予想されており、これを補うための技術として自動配送ロボットが注目されている。物流センターやスーパー、コンビニエンスストアの配送業務を自動化することで、長距離トラック運転手の負担を軽減し、消費者への迅速な商品提供が可能になると期待されている。
また、地方都市では高齢化の進行に伴い、買い物困難者の増加が問題となっている。自動配送ロボットが地域に密着した配送ネットワークを形成すれば、こうした人々が生活必需品を容易に入手できるようになり、社会全体の利便性向上につながる。加えて、EC市場の拡大によりクイックコマースの需要が増加しており、自動配送ロボットの導入が、新たな消費スタイルを支える重要なインフラとなる可能性がある。
⇒ 詳しくは経済産業省のWEBサイトへ