2024年9月21日
労務・人事ニュース
若年期の就業安定性が将来の家族計画を決定づける!最新調査結果
若年期における就業の安定性が年金資産蓄積と社会資本形成に与える影響(社人研)
日本は1990年代から長期にわたる不況に突入し、この期間に新規学卒者として労働市場に参入した世代、いわゆる「就職氷河期世代」は、前の世代に比べて初職に恵まれないだけでなく、その後の所得や雇用形態においても不利な条件に置かれることが多く、その影響が長期化していることが知られています。この世代は、2024年時点で50歳以上となっており、税や社会保障制度の再構築が急務とされています。
特に注目されるのは、就職氷河期世代に続く「ポスト氷河期世代」もまた、安定した就業機会を得られていないという点です。近年の研究により、ポスト氷河期世代もまた、氷河期世代と同様に長期的な社会経済の構造変化の影響を受けていることが明らかになってきました。これにより、氷河期世代と同様に、ポスト氷河期世代も公的年金の積立や社会資本の形成において不利な立場に立たされている可能性が指摘されています。
2024年に実施された調査データの再集計結果からは、特に氷河期世代とポスト氷河期世代が、若年期における就業の安定性において大きな差異を持っていることが示されています。例えば、30歳代の転職回数に注目すると、50歳代では初職のみで20歳代を過ごした人の割合が約65%であったのに対し、30歳代ではこの割合が約49%に減少し、逆に3回以上の転職を経験した人の割合が約31%に達しています。これは、若年期の雇用の流動性が増していることを示唆しており、特に低学歴層においてその傾向が顕著であることが分かります。
また、若年期の転職回数が多いほど、現在の正規雇用者の割合が減少する傾向が見られます。男性では、40歳代で正規就業の割合が大きく減少し、パートタイムや非正規雇用が増加しています。このような雇用形態の変化は、将来的な年金積立額にも影響を与えており、若年期に転職を繰り返した人々の公的年金保険料の納付額が低く、将来受け取る年金額が少なくなる可能性が高まります。
さらに、若年期の転職回数が多い人々は、結婚のタイミングが遅れたり、未婚のままであることが多い傾向があります。特に男性では、転職回数の増加が婚姻率を低下させ、離婚や別居の確率を高めていることが確認されています。これらの社会的要因が、家族形成や社会資本の蓄積に大きな影響を与え、結果として、予定していたよりも少ない子供を持つことになるケースが多いことも報告されています。
一方で、若年期に複数回の転職を経験した人々の中には、自らのキャリアパスを見直す機会として捉え、最終的には満足度の高い職業に就くことができたケースも少なくありません。転職回数が2回程度であれば、主観的満足度が向上する傾向が見られ、これは労働市場におけるミスマッチが改善された結果と考えられます。
しかし、全体的には、若年期における不安定な就業が年金資産の蓄積や家族形成に対して負の影響を与えていることが確認されました。特に、低学歴層においては、転職を繰り返すことで、年金保険料の納付額が低くなり、将来的な年金額が減少するリスクが高まっています。また、家族形成においても、結婚や出産のタイミングが遅れたり、子供の人数が予定よりも少なくなる傾向が見られます。
こうした状況を踏まえ、労働市場における流動化が進む中で、これらの世代に対する効果的な支援策が求められています。具体的には、就職氷河期世代およびポスト氷河期世代の労働市場への再統合を支援し、安定した雇用機会を提供することが重要です。また、公的年金制度の改革を通じて、若年期における不安定な雇用が将来の年金受給額に与える影響を軽減するための施策が必要とされています。
さらに、家族形成や社会資本の蓄積においても、若年期の不安定な就業が長期的な影響を及ぼさないよう、包括的な支援策を講じる必要があります。例えば、育児支援や教育費の軽減を通じて、家族形成を支援することが考えられます。また、地域社会における社会資本の形成を促進し、個人が安定した生活基盤を築けるような環境を整備することも重要です。
このように、若年期における就業の安定性が、その後の年金資産の蓄積や社会資本の形成に大きな影響を与えることが明らかとなりました。今後は、これらの世代に対する包括的な支援策の拡充が求められます。
⇒ 詳しくは国立社会保障・人口問題研究所のWEBサイトへ