2024年9月3日
労務・人事ニュース
茨城県 令和5年度12年連続で最多!いじめ・嫌がらせ問題が浮き彫りにする労働環境の現実
「令和5年度個別労働紛争解決制度の施行状況」を公表します(茨城労働局)
令和6年7月17日、茨城労働局は「令和5年度個別労働紛争解決制度の施行状況」を発表しました。この報告によれば、「いじめ・嫌がらせ」の件数が12年連続で最多となり、労働環境における深刻な課題が浮き彫りになっています。個別労働紛争解決制度は、労働者と事業主の間で生じるトラブルを未然に防ぎ、早期解決を図るために設けられたもので、「総合労働相談」「助言・指導」「あっせん」の3つの方法があります。
令和5年度の総合労働相談件数は22,078件で、前年度比4.9%減少しましたが、相談内容のうち、民事上の個別労働紛争に関する相談は5,885件で、依然として高止まりの状況が続いています。特に「いじめ・嫌がらせ」に関する相談は2,108件と、12年連続で最も多く報告されており、労働環境における深刻な問題が顕著になっています。
また、助言・指導の申出件数は166件で、前年度より14.4%減少しましたが、そのうち50件が「いじめ・嫌がらせ」に関するものであり、こちらも最多となっています。さらに、あっせんの申請件数は146件で、前年度比40.3%増加し、その中でも「いじめ・嫌がらせ」に関するものが83件と最も多く報告されました。
茨城労働局は、今後も総合労働相談コーナーを通じて労働相談に適切に対応するとともに、助言・指導およびあっせんの運用を適切に行い、個別労働紛争の未然防止と迅速な解決に向けて引き続き取り組んでいくとしています。
この報告は、労働施策総合推進法が令和4年4月から中小企業にも全面施行されたことを背景に、特にパワーハラスメントに関する相談が増加していることを示しています。令和5年度の「職場におけるパワーハラスメント」に関する相談は917件で、前年度の803件から増加しています。パワーハラスメントに対する防止策が義務化されたことで、労働者からの相談が増え続けていることがうかがえます。
また、民事上の個別労働紛争の内容を見てみると、自己都合退職や解雇、労働条件の引下げ、退職勧奨といった項目も依然として多くの相談が寄せられています。例えば、自己都合退職に関する相談は1,039件、解雇に関する相談は669件と報告されており、労働者が直面する様々な問題が浮き彫りになっています。
この報告書は、具体的な事例も紹介しており、例えば「いじめ・嫌がらせ」に関する助言・指導では、申出人が職場の先輩職員からのきつい言葉遣いに精神的に追い詰められている事例が挙げられています。このケースでは、労働局が会社に対して適切な対応を助言し、結果として先輩職員に対する指導と配置転換が行われました。
さらに、あっせんにおいても「いじめ・嫌がらせ」に関する事例が紹介されており、申請人が同僚からの無視や業務情報の共有拒否などにより精神障害を発症し、慰謝料を求めたケースが報告されています。このケースでは、労働局が両者の歩み寄りを促し、解決金として給料の約1ヶ月分が支払われることで合意に至りました。
茨城労働局の取り組みは、今後も労働環境の改善に向けて続けられる予定であり、特に「いじめ・嫌がらせ」に関する問題に対しては、引き続き厳正な対応が求められます。労働局は、総合労働相談コーナーや助言・指導、あっせんを通じて、労働者と事業主の間で発生する紛争の未然防止と迅速な解決を図る方針を示しています。
最後に、この報告は、労働者が安全かつ健全な職場環境で働くために必要な情報を提供し、事業主にも適切な対応を促すものであり、労働環境の改善に向けた重要な一歩となることが期待されています。
⇒ 詳しくは茨城労働局のWEBサイトへ