2025年3月12日
労務・人事ニュース
複合サービス事業の平均月給は381,659円!前年比0.1%増(毎月勤労統計調査 令和6年分結果確報)
毎月勤労統計調査 令和6年分結果確報 第1表 月間現金給与額(厚労省)複合サービス事業
令和6年の毎月勤労統計調査によると、複合サービス事業の平均月間現金給与額は381,659円であり、前年比0.1%の微増にとどまった。この増加率は全産業平均の2.8%と比べて低く、業界全体の賃金水準がほぼ横ばいの状態で推移していることが分かる。特に、基本給はわずかに増加しているものの、時間外手当やボーナスの減少が全体の給与伸び率を抑える要因となっている。
給与の内訳を詳しく見ると、基本給に該当する「きまって支給される給与」は300,241円で、前年比0.7%の増加が見られる。この増加率は他業界と比較すると低めであり、複合サービス事業における賃金の上昇が限定的であることを示している。特に、郵便局などの公的サービスを含む業界では、給与改定の幅が小さく、民間企業と比べると大幅な昇給が難しいケースが多いと考えられる。一方で、一部の物流・配送関連の業務では、労働市場の逼迫により賃金の見直しが進んでいる。
また、時間外手当を含む所定外給与は18,240円で、前年比3.2%の減少となった。このデータから、複合サービス事業においては時間外労働の削減が進んでいることが分かる。特に、郵便・宅配業務においては、業務の効率化や自動化が進んでおり、労働時間の短縮が図られていることが影響していると考えられる。一方で、業務量が一定の水準を維持しているため、給与の総額に大きな影響は出ていない。
一方、特別に支払われた給与、いわゆるボーナスに該当する部分は81,418円で、前年比1.8%の減少が記録されている。この減少率は軽微ではあるものの、業界全体の収益の伸びが鈍化していることを示唆している。特に、郵便・宅配業界ではEC市場の拡大により業務量が増加している一方で、価格競争が激しく、利益率の低下がボーナスの減少につながっていると考えられる。また、金融機関の窓口業務などの分野では、業務のデジタル化により人員削減が進み、新規採用やボーナスの支給額が抑えられている可能性がある。
他業界と比較すると、複合サービス事業の給与水準は中程度の水準に位置している。例えば、鉱業・採石業(411,892円)、製造業(412,916円)、不動産・物品賃貸業(420,219円)と比較すると、複合サービス事業の381,659円はやや低めの水準であるが、飲食サービス業等(140,437円)と比べると高く、業界全体の給与水準は一定の安定を保っていることが分かる。特に、時間外手当の減少が給与総額の伸びを抑える要因となっており、今後の給与改善の動向が注目される。
採用担当者にとって重要なのは、この給与水準が人材確保にどのような影響を与えるかである。複合サービス事業は、特に郵便・物流業務において人材の確保が大きな課題となっており、労働力不足が深刻化している。そのため、企業は給与面での競争力を高めることに加え、福利厚生の充実や労働環境の改善を進めることが求められる。特に、労働時間の短縮や休日の確保、キャリアアップ制度の導入などが、人材確保において重要なポイントとなる。
また、今後の課題として、労働時間の適正化とワークライフバランスの向上が挙げられる。複合サービス事業は、繁忙期に業務量が急増する傾向があり、特に年末年始の郵便・宅配業務では労働時間が長くなることが課題となっている。しかし、近年では政府の「働き方改革」や労働基準の厳格化により、労働時間の短縮が求められる中、給与総額の維持が大きな課題となる。採用活動においては、給与の高さだけでなく、労働時間の適正化や職場環境の改善を打ち出すことが、求職者にとって魅力的な要素となる。
今後の展望として、複合サービス事業はデジタル技術の普及や市場環境の変化により、大きな変革期を迎えている。特に、郵便・宅配業務では、ドローンや自動配送ロボットの導入が進んでおり、今後の労働環境が大きく変わる可能性がある。企業は、給与水準の維持・向上に加え、新しい技術を活用した業務の効率化を進めることで、競争力を高めることができる。
⇒ 詳しくは厚生労働省のWEBサイトへ