2024年10月5日
労務・人事ニュース
賃上げと投資で成長型経済へ!2024年骨太方針で日本経済は新たなステージへ
Economic & Social Research No.45 2024年 夏号(内閣府)
令和6年6月に閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針2024」(骨太方針2024)は、日本の経済成長を促進するための主要な政策指針です。特に注目される点は、賃上げと投資が経済の成長を牽引する「成長型経済」の実現を目指す内容であり、これにより、長期にわたって停滞していた日本経済を新たなステージへと導くことを目指しています。以下では、骨太方針2024の主要なポイントを整理し、その背景と影響を解説します。
まず、日本経済の現状についてですが、令和6年には33年ぶりに高水準の賃上げが行われ、企業の設備投資も過去最高水準に達しています。これは、日本が長年デフレ経済の中で苦しんできた背景からの脱却を意味し、経済成長の新たな基盤が整いつつあることを示しています。特に、今回の骨太方針では、デフレからの完全な脱却を目指し、物価上昇を上回る賃上げを持続的に実現することを掲げています。
賃上げの背景には、物価上昇が大きく影響しています。近年、物価上昇が続いている一方で、長い間賃金が伸び悩んでいた日本では、賃金上昇が不可欠な課題となっていました。今回の賃上げは、企業がコストカット中心の経営方針から投資を拡大し、成長を目指す方向へとシフトした結果とも言えます。骨太方針2024では、この賃上げをさらに加速させ、賃金と物価の好循環を形成することが重要視されています。
さらに、骨太方針2024では、GX(グリーントランスフォーメーション)やDX(デジタルトランスフォーメーション)に対する設備投資が大きく取り上げられています。日本経済の持続可能な成長を実現するためには、これらの分野に対する積極的な投資が不可欠であり、具体的には、GX経済移行債の発行やGX推進機構の設置が挙げられています。経団連も115兆円の設備投資にコミットしており、今後数年間でこれらの投資が実現されることが期待されています。
このように、賃上げと設備投資を軸に日本経済を新たなステージに引き上げるための施策が次々と打ち出されている一方で、いくつかの課題も存在します。中でも、賃上げが持続的に実現されるかどうかが大きな問題です。賃金上昇は、消費の拡大を促進し、経済全体の成長を支える重要な要素ですが、そのためには物価上昇を上回る可処分所得の増加が不可欠です。実際に、実質賃金が持続的にプラスになるまでには時間がかかると予想されており、期待感を醸成し続けることが求められています。
また、成長型経済を実現するためには、政府と企業の連携が重要です。官民連携による投資促進が鍵を握っており、特に、GXやDXといった分野での投資拡大が求められています。しかし、日本の強みを活かした戦略的な投資先の選定や、技術力をどのように収益化するかといった点が課題となっています。日本はGX関連の特許を多く保有していますが、それをどのように実際の収益に結びつけるかが今後の重要な焦点となるでしょう。
さらに、財政健全化についても言及されています。骨太方針2024では、2025年度のプライマリーバランス黒字化を目指しつつも、成長と分配の好循環を確立し、日本経済をデフレから脱却させることが強調されています。今後の財政運営においては、経済成長を維持しながら、効率的な歳出を実現する「ワイズスペンディング」が求められています。
最後に、骨太方針2024は、今後の日本経済が直面する人口減少や少子高齢化といった中長期的な課題にも対応しています。特に、2030年代以降に本格化する人口減少に対して、今から集中的な取り組みを進める必要があるとされています。成長型経済を実現するためには、社会課題の解決をエンジンとした生産性向上や、地域ごとの特性を活かした持続可能な地域社会の形成が重要です。
総じて、骨太方針2024は、賃上げと投資を軸に、日本経済をデフレから脱却させ、成長型の新たなステージへと移行させるための具体的なビジョンを示しています。賃金上昇と設備投資の拡大が、今後の経済成長の鍵を握っており、その実現には政府と企業の連携が欠かせません。さらに、長期的な視点で人口減少や少子高齢化といった課題にも対応し、持続可能な経済社会の実現を目指す取り組みが進められています。
⇒ 詳しくは内閣府のWEBサイトへ