2024年12月30日
労務・人事ニュース
転職市場の動向、令和6年上半期は40.0%が賃金増加、前職比で29.7%が1割以上の増加を実現
令和6年上半期雇用動向調査結果の概要 転職入職者の賃金変動状況(厚労省)
2024年上半期における転職者の賃金動向についての調査結果が発表され、注目されています。この調査は、転職を通じて賃金がどのように変化したのかを具体的なデータをもとに分析したもので、転職市場の現状やトレンドを把握する重要な資料となっています。特に、賃金の増減に関する詳細なデータは、企業の採用戦略や人材流動性に関する施策を検討する上で有益な情報を提供しています。
調査結果によると、転職によって賃金が「増加」したと答えた人の割合は全体の40.0%に達し、前職から「減少」したとする回答は28.9%、「変わらない」は29.5%でした。特に、賃金が「1割以上増加」した割合は29.7%を占めており、転職による昇給が多くの人々にとって可能性のある選択肢であることを示しています。一方で、「1割以上減少」した割合も21.1%に達しており、転職が必ずしも収入増加に結びつかないことも明らかになりました。
雇用形態別に見ると、雇用期間の定めのない一般労働者間の移動では賃金が「増加」した割合が「減少」を17.5ポイント上回り、転職による収入増加がより顕著です。対して、パートタイム労働者では「増加」が「減少」を10.7ポイント上回るにとどまり、雇用形態の違いによる賃金変動の傾向が浮き彫りとなっています。
年齢層別のデータも興味深い結果を示しています。例えば、20〜24歳の若年層では「増加」した割合が53.2%と高く、特に「1割以上増加」が41.2%に達しています。これは、若い世代が転職を通じてキャリアアップや収入増加を実現していることを示しています。一方で、60〜64歳では「増加」した割合が13.7%、「減少」した割合が60.1%と、年齢が高くなるにつれて賃金の減少が顕著になる傾向があります。
また、前年同期と比較すると、全体的に賃金が「増加」した割合がわずかに上昇しており、転職市場の好転が伺えます。具体的には、2023年上半期の「増加」は37.9%でしたが、2024年上半期には40.0%へと2.1ポイント上昇しました。この変化は、コロナ禍以降の経済回復や人手不足の影響を受けた企業の積極的な採用活動によるものと考えられます。
調査はまた、賃金増減の背景要因として業界や職種による影響を指摘しています。一部の業界では、技術職や専門職の需要が高まり、それに応じた賃金の上昇が見られます。反対に、労働需給が緩和された業界では、転職後の賃金減少が発生しやすい状況が続いています。
これらのデータは、企業の採用担当者にとって、労働市場の動向を理解し、効果的な採用戦略を立てる上で重要な示唆を与えるものです。例えば、若年層のキャリアアップ志向に対応するためには、研修制度やキャリアパスの明確化が必要です。一方で、中高年層に対しては、経験やスキルを評価する柔軟な賃金体系の導入が求められるでしょう。
転職市場における賃金動向を把握することは、企業が魅力的な雇用条件を提示し、優秀な人材を獲得するための鍵となります。今回の調査結果を基に、今後の採用活動や人材育成において具体的な施策を講じることが期待されています。
⇒ 詳しくは厚生労働省のWEBサイトへ