2025年2月24日
労務・人事ニュース
近畿地方 飲食業界の苦境、個人客の減少と団体需要依存のリスク拡大(令和7年1月)
景気ウォッチャー調査(令和7年1月調査)― 近畿(現状)―(内閣府)
近畿地方の景気動向についての最新調査では、様々な業界における消費動向や経済の変化が明らかになった。今回の調査結果から、特に小売業、観光業、宿泊業、飲食業、そして製造業における動きに焦点を当て、景気の現状と今後の見通しを分析する。
百貨店業界では、年始の商戦が順調に推移し、食料品や防寒用品の売上が前年を上回る結果となった。一方で、食品価格の高騰により日常消費における支出の抑制が見られる。デパ地下の洋菓子やケーキなどは高価格化が進み、一般の消費者が手を出しにくくなっているが、その一方でインバウンド需要の増加が全体の売上を押し上げている。特に、中国をはじめとした海外旅行者の消費が顕著に伸びており、免税売上は前月比43%増となった。高級腕時計や化粧品、ブランド品の販売が好調で、春節の時期にはさらに需要が高まると予測される。
商店街や一般小売店でも、年始の連休の影響で週末の来客数が増加する傾向が見られたが、業種によって販売状況にはばらつきがある。時計販売店では、入試シーズンに向けた時計の購入や電池交換の需要が高まる一方で、呉服店では高額な着物の動きは鈍く、留袖の関連商品が売れている。衣料品専門店では、クリアランスセールによる客足の回復があったものの、全体的な売上は低調で、消費者が節約志向を強めていることが影響している。
スーパー業界では、価格への敏感さが増し、特売品やプライベートブランド商品の人気が高まっている。野菜や果物の価格が高止まりしており、消費者の買い控えがみられる一方、年末年始の売上は前年比で増加した。しかし、食品価格の値上げが消費者の節約志向を強めており、広告商品にのみ購入が集中する傾向が顕著になっている。コンビニエンスストアでも、物価上昇の影響を受け、売上が増加傾向にあるものの、人件費や原価の上昇により利益率は圧迫されている。
観光業界では、インバウンド需要が依然として高い水準を維持している。特に観光型旅館や都市型ホテルでは、海外からの宿泊客が堅調に推移しており、忘年会や新年会の需要も前年を上回った。一方で、レストラン業界では平日の客足が落ち込み、週末に集中する傾向が強まっている。特に個人利用客の減少が著しく、団体客の予約に依存する形となっている。自動販売機の売上も価格上昇の影響を受けており、全体的に消費者の支出抑制がみられる。
製造業では、家電量販店の動向が注目される。年始の福袋セールで来客数が増加したものの、物価上昇の影響で家電購入を控える消費者が増え、売上の二極化が進んでいる。特に高額な省エネ型家電の需要は堅調なものの、低価格帯の家電に関しては購入が慎重になっている。家電メーカー側も、買い替え需要を促進する施策を打ち出しているが、消費者の間では修理による対応を模索するケースが増えている。
自動車販売業界では、中古車市場が低迷しており、来客数や問い合わせ件数が減少している。新車市場においては、生産回復により供給が安定する見込みだが、米国経済の影響や円安の影響など外部要因が販売動向に大きく影響している。高額車両の購入には慎重な姿勢がみられ、販売台数の伸びは鈍化している。
住宅市場では、郊外を中心に分譲マンションの販売が苦戦している一方、都心部の賃貸市場は賃料上昇にもかかわらず堅調な動きを見せている。建築資材の価格高騰や人件費の上昇が建築コストを押し上げており、その負担が消費者にも影響を与えている。特に、新築マンションの販売が停滞しており、今後の価格調整が求められる状況となっている。
雇用市場では、大阪・関西万博関連の求人が増加傾向にあり、企業の採用意欲は依然として高い。しかし、求職者の動きは鈍く、応募数が減少しているため、人手不足が慢性化しつつある。初任給の引き上げに踏み切る企業も一部では見られるが、全体の賃金水準の上昇には至らず、物価上昇に追いついていない状況が続いている。特に、学生の間では地元志向が根強く、都市部での就職を避ける傾向が顕著になっている。
全体として、近畿地方の景気は堅調な部分と課題が入り混じる状況が続いている。小売業や観光業においては、インバウンド需要が売上を押し上げる一方、国内消費の伸び悩みが課題となっている。製造業や住宅市場では、物価上昇やコスト増の影響が企業経営に重くのしかかっている。今後の展開としては、消費者の購買意欲を引き出す施策や、労働市場の改善が求められるだろう。
⇒ 詳しくは内閣府のWEBサイトへ