2025年2月25日
労務・人事ニュース
近畿地方 2025年の労働市場予測:求人数は前年比15%増も、求職者不足で採用難易度が上昇(令和7年1月調査 先行き)
景気ウォッチャー調査(令和7年1月調査)― 近畿(先行き)―(内閣府)
令和7年1月の近畿地方における景気動向調査によると、多くの業種において景気の先行きに対する期待と懸念が交錯していることが明らかになった。特に、大阪・関西万博の開催が迫る中、インバウンド需要の増加が見込まれる一方で、物価上昇や賃金の動向が今後の消費者行動にどのような影響を与えるかが重要な課題となっている。
まず、小売業界では、観光客の増加による売上向上が期待される百貨店や専門店がある一方、物価の高騰による消費者の買い控えが懸念される店舗も少なくない。例えば、高級レストランや都市型ホテルでは、大阪・関西万博の開催により訪日外国人客の増加を見込んでいるが、一方で食品の値上げや国内中間層の支出抑制が影響を与える可能性が指摘されている。特に百貨店においては、インバウンド消費に支えられつつも、国内消費の減少が続けば、長期的な成長は難しくなるとの見方が強い。
また、コンビニ業界では、観光需要の回復に伴い売上の増加が期待されているものの、価格の上昇に伴う購買意欲の低下が懸念されている。特に、春の新生活シーズンに向けた消費の動向が重要な指標となりそうだ。都市部のコンビニでは、新入社員や留学生の増加により、一定の客足が見込まれるが、全体的な消費意欲がどの程度回復するかは未知数である。
一方、製造業では、輸送用機械器具製造業や食料品製造業が一定の成長を見込んでいるが、化学工業や金属製品製造業では、米国の輸入関税引き上げや原材料価格の上昇による影響を懸念する声が強まっている。特に、繊維工業では、価格競争が激化し、品質面での差別化が求められる状況となっている。輸送業でもガソリン補助金の縮小によりコスト増が見込まれており、今後の景況感は不透明なままである。
住宅市場においては、都市部のタワーマンションを中心に投資家の需要が高まる一方、実需層の購買力は低下傾向にある。大阪・関西万博の終了後の需要動向については、多くの企業が慎重な姿勢を示しており、特に中小企業の賃上げ動向が住宅市場の活性化に影響を与えるとみられている。
労働市場では、人材派遣業や民間職業紹介機関が大阪・関西万博の影響で一時的な求職市場の活性化を見込んでいるものの、長期的な雇用情勢には慎重な見方が強い。特に、求人は増加しているが、求職者の確保が困難である状況が続いているため、企業側の採用戦略の見直しが求められる。さらに、大学の就職担当者によると、初任給の上昇傾向は見られるものの、福祉や医療業界ではそれほど賃金が変わらず、業種や企業規模による差が顕著になっている。
金融業界では、物価上昇と日本銀行による政策金利の引き上げにより、企業や個人の金利負担が増加し、消費が悪化する可能性が指摘されている。また、不動産業では、実店舗の空室率が上昇することで賃料の低下が予想されるなど、将来的なリスクが懸念されている。
総じて、近畿地方の景気動向は、大阪・関西万博の開催を機に一定の回復基調を見せるものの、物価上昇や金利の影響、消費者行動の変化が今後の景気の行方を左右する重要な要素となる。企業の採用担当者にとっては、人材確保の難しさや賃上げ動向の影響を注視しつつ、労働市場の変化に柔軟に対応することが求められる。
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