2025年4月18日
労務・人事ニュース
退院から地域定着まで、国の支援で高次脳機能障害者の社会復帰を実現するモデル事業
- 「時短勤務可」/准看護師・正看護師/介護施設/夜勤なし
最終更新: 2025年5月18日 22:32
- 「夜勤なし」/准看護師・正看護師/介護施設/オンコールなし
最終更新: 2025年5月18日 22:32
- 介護職員/2025年5月19日更新
最終更新: 2025年5月19日 06:36
- 「夜勤なし」/准看護師・正看護師/介護施設/ブランクのある方も歓迎
最終更新: 2025年5月18日 22:32
自動車事故による高次脳機能障害者の社会復帰を促進する自立訓練事業所の取組を支援します! ~令和7年度 社会復帰促進事業の公募開始~(国交省)
2025年4月1日、国土交通省は、自動車事故により高次脳機能障害を負った方々の社会復帰を支援するための新たな施策として、「令和7年度 社会復帰促進事業」の公募を開始しました。この制度は、頭部外傷による後遺症のひとつである高次脳機能障害に対応する支援体制の構築を目的としており、特に自立訓練事業所における実践的な取組みに焦点を当てています。近年の調査や臨床の現場からも、高次脳機能障害に対する適切なリハビリテーションが社会復帰に繋がることが明らかになっており、国としても段階的な支援の必要性を強く認識してきました。
高次脳機能障害は、記憶障害や注意力の低下、社会的行動の障害など、外見からはわかりにくい症状が多く見られます。入院中は医療従事者の手厚いサポートのもとで過ごすため、こうした障害が目立ちにくい場合もあり、退院後になってから日常生活に困難が生じるケースが少なくありません。そのため、早期の発見とともに、病院から社会へと移行する過程における切れ目のない支援が求められています。しかしながら、現在の支援体制にはまだまだ課題が残されており、特に地域での支援力の不足や専門知識を持つ人材の確保が困難であるという点が挙げられています。
こうした背景を踏まえ、国土交通省では令和4年度からモデル事業としてこの社会復帰促進事業を開始し、初年度は4事業者、翌年は6事業者、そして令和6年度には8事業者と、年々対象を拡大しながら支援体制の充実を図ってきました。そして今回、令和7年度の事業実施に向けて、新たに自立訓練を提供する事業所の公募が始まったのです。公募期間は2025年4月1日から4月30日までで、選定された事業者は高次脳機能障害者に対するリハビリ支援から地域への定着まで、包括的な支援を展開することが求められます。
この事業の柱となるのは、「ネットワーク構築支援」、「自立訓練提供支援」、「地域連携支援」の3つです。特に地域連携支援は必須項目とされており、地域の医療機関や支援施設との連携を通じて、退院後の受け入れ体制を整備することが期待されています。病院では主に医学的な評価を行い、事業所では社会生活における能力の評価を担当するというように、双方の得意分野を活かした支援体制の構築が目指されており、事業所と病院が連携して患者の社会復帰を後押しする仕組みが重要です。
支援対象となる事業所には、専門的な知識を持つ職員の確保が求められますが、実際にはその確保が困難であることも多く、賃金水準や人材育成の面で課題を抱える地域も少なくありません。このため、モデル事業では、専門人材の人件費や求人活動にかかる費用などを支援する仕組みが設けられています。初年度は最大で1,200万円(補助率10/10)、2年目・3年目は上限1,000万円が支給されるなど、継続的な財政的後押しも整備されています。さらに、スタートアップ加算として、初年度には基本項目の支援額に20%の加算が認められており、新たに事業に参加する事業者が無理なく体制を整えられるよう工夫されています。
4年目以降は段階的な補助率の引き下げが行われ、5年目には50%、6年目には25%となり、7年目以降は自主財源での運営が求められます。これは、補助を受けつつ事業者が自立し、継続可能な支援体制を構築していくための設計です。また、加算項目として訪問活動の実績に応じた評価も導入されており、たとえば訪問件数に5万円を乗じた額が加算される仕組みが設けられています。これにより、実際の活動が可視化され、より積極的に地域との連携を深めるインセンティブが働く構造となっています。
実際に令和5年度に選定された事業所の取組みをとりまとめた好事例集も公表されており、既存の事例を参考にすることで、これから新たに参加する事業所も効果的な支援モデルの構築が可能になります。このように、本事業は単なる補助金制度にとどまらず、地域社会全体で高次脳機能障害者の社会参加を支援するための包括的な枠組みであり、国としての明確なビジョンと持続可能性の高い制度設計が特徴です。
企業の採用担当者や医療・福祉分野で人材育成を担う部門にとっては、この事業の展開は見逃せない情報です。なぜなら、専門知識を有する人材の確保が政策的にも求められており、こうした人材を育成・採用する体制が企業競争力の一環ともなり得るからです。また、地域に根差した福祉インフラの整備は、企業のESG評価においても重要な要素であり、今回の取り組みはその具体的な実践例といえるでしょう。
このように、国土交通省が展開する社会復帰促進事業は、支援対象者のみならず、関係する地域社会や事業所、そして関連する業界全体に対しても大きな意義を持つ政策です。今後もその実施状況と成果が注目され、さらなる制度拡充の方向性を見出すための指標となっていくことが期待されます。
⇒ 詳しくは国土交通省のWEBサイトへ