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2024年12月30日

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退院患者1,388.2千人のうち家庭に戻る割合が81.5%、企業の採用担当者が知るべき地域包括ケアの現状と課題

令和5年(2023)患者調査の概況 入院前の場所・退院後の行き先(厚労省)

令和5年9月における退院患者数に関する統計データが示すところでは、入院前の生活環境および退院後の行き先において、「家庭」が大きな割合を占めていることが特徴的です。この期間に退院した患者数は推計1,388.2千人であり、そのうち87.0%が入院前に「家庭」で過ごしていたことがわかります。さらに、退院後の行き先についても同様に「家庭」が81.5%を占めており、医療機関を利用する患者の大部分が自宅を生活の基盤としている現状が浮き彫りになっています。

このデータから明らかになるのは、高齢化社会の進展や地域包括ケアの重要性が高まる中、自宅を中心とした在宅医療の拡充が求められることです。入院前の「家庭」に次いで多いのは「他の病院・診療所」で、6.8%が該当します。一方で、介護老人保健施設や社会福祉施設を利用していた患者の割合は非常に少数派にとどまっています。これは、患者が入院前も退院後も自宅での生活を希望する傾向が強いことを示唆していると考えられます。

一方で、退院後の行き先を細かく見ると、「他の病院・診療所」への移動が8.8%と、一定の割合を占めています。この背景には、患者が引き続き医療を必要としている場合や、リハビリテーションなど専門的なケアを受ける必要がある場合が考えられます。また、介護老人保健施設や介護老人福祉施設へ移行する患者も一部見られるものの、それぞれの割合は6.1%および4.9%と、限定的な範囲にとどまっています。社会福祉施設に移行する割合も同様に4.9%となっており、医療から福祉への移行が求められる患者が一定数存在していることが伺えます。

これらのデータは、地域での医療・福祉の連携を強化する必要性を示しています。在宅医療の支援が重要であると同時に、施設介護を希望する人々やその家族への対応策も欠かせません。特に、高齢化社会が進む中で、患者の選択肢を多様化させ、より快適かつ安全な環境を提供することが求められます。さらに、退院後の生活環境が「その他」に該当するケースも一定割合存在し、これには死亡や行き先が不明な患者が含まれているとされています。この点も含め、より精緻なデータ収集と分析が必要です。

全体として、退院患者のほとんどが自宅に戻ることを選択していることは、医療と生活の融合を図る地域包括ケアシステムの構築が進んでいる証拠ともいえます。しかし、医療機関や福祉施設への依存が依然として残る中で、今後の課題としては、在宅療養を希望する患者とその家族を支援する体制の整備や、施設介護を選択した場合の負担軽減策が挙げられます。特に、患者が住み慣れた環境で安心して生活できるようにするためには、医療・介護・福祉の連携が欠かせません。

こうした状況において、企業の採用担当者や経営者にとっても、在宅勤務制度や柔軟な働き方の推進が重要なテーマとなります。社員が家族の介護や看護を理由に仕事を辞めることを防ぐため、企業がどのような支援策を講じるかが問われています。現場のニーズを的確に捉えた施策を進めることが、働きやすい職場環境の整備につながり、結果的に優秀な人材の確保と定着にも寄与するでしょう。

このようなデータを基に、今後の医療・福祉政策の方向性や企業が果たすべき役割についての議論を深めることが期待されます。医療、福祉、そして企業が一体となった取り組みが、持続可能な社会の実現に向けた鍵となるでしょう。

⇒ 詳しくは厚生労働省のWEBサイトへ

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