2024年7月19日
労務・人事ニュース
通商白書2024発表:ルールベースの国際経済秩序の再構築と日本企業の成長戦略
「令和6年版通商白書」を取りまとめました(経産省)
経済産業省が発行する「通商白書2024」は、国際経済動向や通商政策に影響を与える諸外国の政策を分析し、通商政策の形成に寄与するとともに、国民に通商政策の基礎となる考え方や方向性を示す重要な文書です。毎年発行され、今年で76回目を迎えます。
2024年版の通商白書は、全三部で構成されています。第Ⅰ部では、世界経済の動向と課題を分析し、第Ⅱ部では、世界経済や日本経済の構造的な課題を掘り下げています。第Ⅲ部は施策編で、政府の通商分野における取り組みを報告しています。具体的には、第Ⅰ部で世界経済の回復状況と日本企業への影響を、第Ⅱ部でグローバルな構造変化に対する日本の対応を検討し、第Ⅲ部では、ルールベースの国際通商システムや各国戦略に焦点を当てています。
白書は、特にルールベースの国際経済秩序の維持・強化が喫緊の課題であると強調しています。世界経済の分断が進む中で、特定の国への依存リスクが顕在化し、保護主義の台頭が懸念されています。このような背景から、持続可能性や信頼性を考慮した公平な競争条件の確保が求められています。具体的には、透明かつ強靱で持続可能なサプライチェーンの構築が急務とされています。
さらに、白書は、日本企業のグローバルな成長拡大を支援するための具体的な施策にも言及しています。円安が輸出の好機となる一方で、輸出数量の伸び悩みや国内回帰の機運が高まっている現状を踏まえ、輸出力の強化が課題とされています。特に、間接輸出企業の新規海外展開を後押しすることが有効であるとされています。
一方で、特定重要物資のサプライチェーン強靱化に向けた取り組みも進められています。政府は、2022年12月に特定重要物資として11物資を指定し、2024年2月には先端電子部品やウランを追加指定しました。これに基づき、供給確保計画が策定され、安定供給確保支援法人や独立行政法人を通じて認定供給確保事業者の取り組みが支援されています。具体的には、総額約1兆358億円の予算が助成金等として充てられています。
このような取り組みの一環として、経済安全保障推進法に基づくサプライチェーン強靱化スキームが導入されています。内閣総理大臣が基本指針を作成・閣議決定し、国民の生存に不可欠な物資やその原材料等が政令で指定されます。その後、物資所管大臣が具体的な支援措置を記載した取組方針を作成し、事業者が計画を作成・申請する仕組みです。認定を受けた事業者は、NEDOやJOGMECなどの指定法人から基金等による支援を受けることができます。
これらの施策を通じて、日本は世界経済の回復を支えつつ、国内企業の競争力を強化し、持続可能な成長を実現することを目指しています。特に、グローバル・サウス諸国の自立的発展を支援するため、ガバナンスや対外開放の推進、イノベーションの実現が重要とされています。
また、白書は、日本企業の輸出力強化に向けた具体的な施策にも言及しています。特に、間接輸出企業の新規海外展開を後押しすることで、輸出拡大のポテンシャルを引き出すことができるとしています。これには、リソースや情報・ノウハウの不足という課題がある一方で、直接輸出による大きな成長機会も存在しています。
このように、通商白書2024は、日本の通商政策の現状と課題を詳細に分析し、今後の方向性を示しています。ルールベースの国際経済秩序の維持・強化、特定重要物資のサプライチェーン強靱化、日本企業のグローバルな成長拡大の支援など、多岐にわたる施策が盛り込まれています。これにより、日本は国際社会における競争力を維持・強化し、持続可能な経済発展を実現することを目指しています。
この白書が示す施策を通じて、日本は世界経済の分断を克服し、ルールベースの自由な国際貿易秩序を再構築するためのリーダーシップを発揮することが期待されています。また、日本企業の競争力を高め、グローバルな成長機会を最大限に活用するための具体的な支援策が講じられています。特に、間接輸出企業の新規海外展開を後押しすることで、輸出力の強化を図ることが重要です。
今後も、通商白書は日本の通商政策の基礎を形成する重要な文書として、国際経済動向や政策の分析を通じて、日本の経済成長と国際競争力の向上に貢献することが期待されます。日本企業や関係者にとって、この白書は今後の事業展開や政策形成において重要な参考資料となることでしょう。
参考:通商白書の概要
⇒ 詳しくは経済産業省のWEBサイトへ