2024年9月15日
労務・人事ニュース
運輸業・郵便業における労働争議 労働損失日数1,274日で全産業中最多
令和5年労働争議統計調査の概況 争議行為を伴う争議の状況(厚労省)
令和5年における労働争議の状況について、産業別および企業規模別のデータから労働争議の動向が明らかになりました。特に「争議行為を伴う争議」に焦点を当てると、医療・福祉分野が他産業を大きく上回る件数と行為参加人数を記録しています。医療・福祉産業では28件の争議が発生し、参加者数は5,442人に上り、労働損失日数も382日と高水準に達しています。この結果は、医療・福祉分野における労働条件の改善が引き続き大きな課題であることを示唆しています。
情報通信業や運輸業・郵便業でも比較的多くの争議が発生しており、それぞれ14件と10件の争議が記録されました。特に運輸業・郵便業では労働損失日数が1,274日に達し、全産業中で最も多い日数を記録しています。これはこの業界において、労働条件の改善に向けた強い要求が続いていることを示しています。
企業規模別に見ると、従業員1,000人以上の大企業において争議行為が最も多く、47件の争議が発生し、行為参加人数は3,348人、労働損失日数は2,535日となっています。中小企業においても争議が発生しており、特に従業員数300~999人の企業では48件の争議があり、行為参加人数は1,762人、労働損失日数は399日となりました。従業員数99人以下の小規模企業でも争議が発生し、29件の争議があり、行為参加人数は322人、労働損失日数は265日に達しました。これらのデータから、中小規模の企業においても労働者が自らの権利を主張し、争議行為に至るケースが少なくないことがわかります。
また、主要な労働団体別に見ると、「連合」に所属する労働組合が11件の争議を行い、1,122人が参加し、労働損失日数は1,268日となっています。これに対して、「全労連」に加盟する組合では、40件の争議が発生し、6,937人が参加、労働損失日数は981日に達しています。これらの数値は、各団体の労働組合がいかに活発に活動しているかを物語っており、労働者の権利確保に向けた取り組みが継続的に行われていることを示しています。
労働争議の原因としては、賃金や労働時間の改善、労働条件の向上に関する要求が主な要因となっています。特に、医療・福祉分野では、過酷な労働環境が深刻な問題として浮上しており、これが多くの争議行為を引き起こしていると考えられます。情報通信業や運輸業でも、技術革新や業界特有の労働環境の変化に伴い、労働者がより良い条件を求める動きが活発化しています。
これらのデータから、今後も企業の採用担当者にとって、労働争議の発生を未然に防ぐためには、従業員との対話を重視し、労働条件の改善に積極的に取り組む必要があることが明らかです。特に大企業においては、従業員数が多いため、一度争議が発生するとその影響は非常に大きくなる可能性があります。中小企業でも、労働者の権利を尊重し、適切な労働環境を提供することが、争議の回避につながるでしょう。
労働争議の発生を防ぐためには、賃金や労働条件の改善だけでなく、従業員とのコミュニケーションを強化し、信頼関係を築くことが重要です。また、労働組合との協力関係を強化し、問題が発生する前に解決策を模索することが求められます。企業としては、労働争議が発生した場合の対応策も事前に検討しておくことが、企業のリスク管理にとって重要な課題となります。
これらの課題に対処するためには、労働条件の見直しだけでなく、企業の文化として、従業員の声を大切にし、積極的に改善策を導入する姿勢が求められます。これにより、労働争議のリスクを低減し、安定した経営を維持することが可能となるでしょう。
⇒ 詳しくは厚生労働省のWEBサイトへ