2024年7月29日
労務・人事ニュース
配偶者手当と賃金制度の見直しが求められる現代、多様な人材を公平に評価する職務給の導入が急務
【配偶者手当と賃金制度の見直しセミナー】個々の企業の実態に応じた職務給の導入メリット~熾烈な人材獲得競争に向けて②~(厚労省)
配偶者手当と賃金制度の見直しが求められる現代、社会保険労務士の中村氏がセミナーでこの課題について詳しく解説しました。賃金の決定基準が曖昧な企業が多く存在する中で、従業員の納得感を得られる賃金制度の構築が求められています。特に職務給の導入が注目されており、そのメリットや課題についても詳しく触れられました。
まず、賃金制度の現状について、中村氏は年齢や勤続年数、学歴などの基準で賃金が決定される場合や、役職や業務内容、営業成績などの仕事に関連する基準で決定される場合、さらには経営者の裁量で決まるなど、多様なパターンが存在することを指摘しました。このような基準が曖昧だと、従業員に対する説明が難しく、不満が生じる原因となることが強調されました。
続いて、現代社会における賃金制度の見直しの必要性についても言及しました。少子高齢化が進行し、急速に変化する社会に対応するためには、多様な人材を公平に評価し、処遇する賃金制度が求められています。これまでの年功序列型の賃金制度が高度経済成長期には有効だったものの、現代においてはその限界が露呈しています。
年功序列型賃金制度は、労働力不足を背景に、長く勤めることで高い賃金を得られる仕組みとして機能していました。企業は従業員の生活を安定させるために、年齢や勤続年数に応じて賃金を上昇させる制度を整備してきました。しかし、経済の低成長時代に突入し、バブル崩壊後の長期不況を経験する中で、この制度の持続可能性が問われるようになりました。
欧米で採用されている職務給は、仕事の価値に基づいて賃金を決定する制度です。これにより、従業員は自らのスキルを高め、より高い賃金を得るために努力する動機付けが強まります。一方で、日本企業においては、職務に基づく賃金制度をそのまま導入することは難しく、従来の年功序列や職能給とのバランスを取ることが求められました。
職能給は、従業員の能力や成果に基づいて賃金を決定する制度であり、日本企業に広く採用されています。この制度では、従業員の職務遂行能力を評価し、それに応じた賃金を支給します。ただし、職務の定義や評価基準が曖昧になりがちで、主観的な評価が入りやすいという課題もあります。
中村氏は、賃金制度の改革においては、賃金体系の全体像を把握し、俗人的な要素と仕事の要素をどのように組み合わせるかが重要であると述べました。特に、メンバーシップ型雇用とジョブ型雇用の違いに着目し、それぞれのメリットとデメリットを理解することが必要です。
メンバーシップ型雇用では、まず人を採用し、その後に配置を行う形態が主流です。従業員の長期雇用を前提としており、会社主導の人事移動や教育が特徴です。これに対して、ジョブ型雇用では、まず仕事を決めて、その仕事に適した人を採用する形態です。このような雇用形態の違いが、賃金制度にも影響を及ぼします。
最後に、D&I(多様性、公平性、包括性)への意識が高まる中で、職務給が注目されていることを指摘しました。特に、非正規雇用労働者や多様な人材に対する公正な評価と処遇が求められています。企業は、従業員のパフォーマンスを最大限引き出すために、賃金制度の見直しを検討することが重要です。
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