2024年7月29日
労務・人事ニュース
配偶者手当の見直しで人材獲得競争を勝ち抜くための具体的手法
【配偶者手当と賃金制度の見直しセミナー】配偶者手当の見直し~熾烈な人材獲得競争に向けて①~(厚労省)
配偶者手当の見直しと人材獲得競争に向けた賃金制度の改定に関するセミナーの内容について詳しく説明します。まず、賃金制度の見直しがなぜ重要なのか、その背景と目的について解説します。
賃金制度にはさまざまな種類があり、それぞれが特定の目的を持って支給されています。しかし、賃金制度を見直す際に最も重要なのは、どのような賃金制度を導入するかということではなく、従業員にとって魅力的な賃金制度が整っているかどうかです。従業員が活躍できる環境を提供するためには、賃金がどのように決まるのかが分かりやすく、明確である必要があります。
配偶者手当は、基本給とは別に支給される手当の一つで、配偶者を扶養する従業員に対して支給されます。この手当は、個人の能力や仕事とは関係なく支給されるものであり、家族手当の一種です。その起源は大正時代にさかのぼり、昭和期には賃金統制が行われ、定期昇給以外の賃上げが禁止されたため、多くの企業で家族手当が利用されました。
現代においては、人口減少が進み、少子化や高齢化が顕著になっています。生産年齢人口は2050年までに約26%減少すると見込まれており、人材獲得競争が激化しています。有効求人倍率は10年以上連続で1.00倍を超え、中小企業の多くが人手不足を感じています。こうした状況では、従来の賃金制度が必ずしも多様な従業員のニーズに対応できていない可能性があります。
特に、配偶者手当を含む賃金制度が既婚者のみを対象としている場合、現在の多様化した家族構成やライフスタイルに対応できていないことが課題となっています。配偶者手当の支給企業数は減少傾向にあり、特に収入制限のある手当は少なくなっています。これは、企業がこの手当の効果を感じにくくなっていることを示しています。
賃金制度の見直しを検討する際には、まず会社全体でどのような賃金制度を築きたいのか、その目標を明確にすることが重要です。例えば、配偶者手当を廃止し、その原資を基本給に振り分ける、子供手当を新設する、資格手当を導入するなどの選択肢があります。どのような制度が従業員のモチベーションを高め、企業の持続的な成長につながるのかを慎重に検討する必要があります。
見直し案が具体化した後は、労働組合や従業員との話し合いが重要です。賃金制度の変更は従業員にとって非常に関心が高い労働条件の変更であり、労働者の合意を得る必要があります。一方的な変更はモチベーションの低下や不満を招く可能性があるため、丁寧な合意形成が不可欠です。
合意形成が難しい場合でも、労働条件の変更が合理的であると判断されれば、変更が認められることがあります。この合理性の判断には、労働者の不利益の程度や変更の必要性、労働組合との交渉状況などが考慮されます。企業の見直し事例では、賃金原資の総額が維持され、不利益を受ける労働者に対する経過措置が設けられていることが多く、これが円滑な見直しに役立っています。
また、就業規則の変更が決定された場合は、従業員に周知し、必要な手続きを経て正式に施行することが重要です。就業規則の変更は、従業員にとって確認しやすい形で周知されなければなりません。
配偶者手当の見直しや年収の壁に関する問題も重要です。配偶者手当には収入制限が設定されている場合があり、これが年収の壁として働くことがあります。年収の壁は、103万円や130万円などの基準を超えると配偶者手当がカットされるため、収入を抑えるための働き方調整が行われることがあります。
政府はこの年収の壁を克服するための支援策を講じており、キャリアアップ助成金の社会保険適用時処遇改善コースや社会保険適用促進手当の創設などがあります。これらの支援策を活用することで、企業の負担を軽減し、従業員が希望通り働ける環境を整えることができます。
⇒ 詳しくは厚生労働省のYoutubeチャンネルへ