2024年9月3日
労務・人事ニュース
長時間労働が発覚した事業場の44%が違法!神奈川労働局の監督指導結果を詳細分析
長時間労働が疑われる事業場に対する令和5年度の監督指導結果を公表します(神奈川労働局)
神奈川労働局は、令和5年度における長時間労働が疑われる事業場に対する監督指導結果を公表しました。この監督指導は、労働基準監督署が長時間労働の可能性が高い事業場を対象に実施したもので、特に1か月当たり80時間を超える時間外・休日労働が行われていると考えられる事業場や、過労死のリスクが高い事業場が重点的に調査されました。
この結果、監督指導が行われた956事業場のうち、44%に当たる421事業場で違法な時間外労働が確認されました。さらに、その中でも月80時間を超える時間外・休日労働が認められたのは241事業場であり、これは全体の57.2%に相当します。加えて、月100時間を超える時間外・休日労働があった事業場は142箇所、月150時間を超えた事業場は28箇所、そして月200時間を超えた事業場も2箇所存在しました。
違法な長時間労働が確認された事業場に対しては、労働基準法に基づく是正勧告が行われ、労働時間の短縮や適正化に向けた具体的な改善策の実施が求められました。例えば、36協定で定められた上限時間を超えていた場合、これに対する是正措置として、労働時間の削減や勤務体制の見直しが指導されました。また、割増賃金の支払いに関しても、適正な計算と支払いが行われていない事業場に対しては、法令に基づいた改善を求める是正勧告が行われました。
さらに、過重労働による健康障害防止措置が未実施だった200事業場にも、必要な対策を講じるよう指導が行われました。特に、月80時間を超える時間外・休日労働を行っている労働者に対しては、医師による面接指導などの健康管理が求められ、これに基づく具体的な改善策の実施が指示されました。
労働時間の把握方法に関しても、不適正な管理が行われている事業場が155箇所あり、これらの事業場には、適正な労働時間管理を行うためのガイドラインに従った改善が指導されました。例えば、タイムカードやICカードを使用した労働時間の記録が不十分だった場合、労働者の実際の労働時間を適正に把握するための具体的な方法が示されました。
監督指導の結果として、違法な時間外労働が多くの事業場で確認されたことが明らかになりましたが、その是正措置がどの程度効果を発揮しているかについても注目すべきです。多くの事業場では、指導を受けた後に労働時間の短縮が実現され、月80時間を超える時間外労働が減少したとの報告があります。例えば、正社員の増員や勤務体制の見直し、業務の分担などが効果的に実施され、労働時間が大幅に短縮された事例が多く見られました。
一方で、過重労働が原因で健康障害が発生した事例も報告されており、これに対する対応も強化されています。具体的には、長時間労働が原因で発症した脳・心臓疾患に関する労災請求が行われた事業場に対して、詳細な調査が行われ、必要な改善策が指導されました。このような事例では、労働者の健康管理が不十分であったため、健康診断の徹底や労働時間の適正化が指導されています。
神奈川労働局は、今後も長時間労働の是正に向けた取り組みを強化し、11月に実施される「過重労働解消キャンペーン」期間中には重点的な監督指導を行う予定です。これにより、長時間労働が常態化している事業場に対する監督がさらに強化され、労働者の健康と安全が確保されることが期待されています。
このような取り組みを通じて、労働基準監督署の指導による労働環境の改善が進んでおり、今後も労働者の働きやすい環境の実現に向けた努力が続けられるでしょう。企業においても、これらの指導を真摯に受け止め、労働時間の適正化や健康管理の強化に努めることが求められています。企業が持続的に成長するためには、従業員の健康と安全が不可欠であり、そのためには法令遵守を徹底し、健全な労働環境を維持することが重要です。
⇒ 詳しくは神奈川労働局のWEBサイトへ