2024年11月13日
労務・人事ニュース
長野県 新規高等学校卒業者の就職内定率が63.6%に低下、求人倍率2.85倍の現状を読み解く
令和7年3月新規高等学校卒業者の求人・求職・就職内定状況(令和6年9月末現在)(長野労働局)
令和7年3月に卒業予定の新規高等学校卒業者の求人、求職、そして就職内定の状況が令和6年9月末時点でまとめられました。長野労働局の発表によると、求人数は7,505人であり、前年同期と比べ2.1%の減少が見られました。これに対し、求職者数は2,629人で、前年同期から5.9%の増加となっています。この増加は、高校卒業予定者の就職活動への関心が高まっていることを示しており、地域や業種を問わず、多様な求人が集まっている一方で、求職者側の希望も広がりを見せていると言えます。
また、求人倍率は2.85倍で、前年同期より0.24ポイント下がりました。この数字は、求人に対する求職者の割合を示しており、雇用市場全体が少し冷え込んでいることを反映しています。しかし、就職内定者数は1,671人で前年同期から1.3%増加しており、内定率は63.6%と前年の66.4%から少し低下しました。この点については、企業側が求人数を減らす一方で、求職者側が特定の業種や勤務地にこだわる傾向が強まっていることが影響している可能性があります。
長野県内の地域別に見ると、北信地方では求人数が2,620人と安定しており、内定率も72.7%で前年より0.5ポイントの増加が見られました。一方で、東信地方では求人数が1,279人と減少し、就職内定率も49.7%と低下しています。中信地方や南信地方でも同様の傾向が見られ、特に南信地方では求人数が2,263人と減少しつつも、就職内定率は72.0%と、比較的高い水準を維持しています。
産業別では、製造業が求人数3,207人と最も多く、全体の約42%を占めています。特に電気機械器具製造業や輸送用機械器具製造業での求人が多く、これらの業種は就職内定率が他の業種に比べて高い傾向があります。さらに、情報通信業や運輸業でも需要が見られ、運輸業における内定率は44.2%と前年より大きく改善されています。
一方で、卸売業、小売業、宿泊業、飲食サービス業などのサービス業では、求人が減少しつつあり、特に飲食サービス業では求人数が前年より24人増加したものの、就職内定者数は横ばいの状態が続いています。これらの業界は、特に新型コロナウイルスの影響を強く受けており、回復には時間がかかる可能性があります。
長野県における新規高等学校卒業者の雇用環境は全体として、業種や地域によって異なる動きを見せていますが、全体的に見ると、依然として製造業が雇用の柱となっており、特に技術系の職種においては比較的内定率が高い状況が続いています。しかし、サービス業や小売業などの労働集約型産業では、求人が減少傾向にあるため、今後の動向に注視が必要です。
さらに、求人倍率が減少していることから、企業側が新規卒業者に求めるスキルや経験が高度化している可能性も考えられます。このため、高校生に対しても、早期からの職業教育やインターンシップなど、実務に近い経験を積む機会の提供が今後ますます重要になってくるでしょう。
また、内定率の低下には、求職者側の希望条件の多様化や、地域間での雇用条件の不均衡が影響していると考えられます。特に都市部に近い地域と、そうでない地域の間では、給与や福利厚生の差が広がっているため、地方の企業はより魅力的な条件を提示する必要があります。これにより、求職者の定着率向上や、地域の産業活性化にもつながる可能性があります。
今回のデータは、来年の高校卒業予定者の就職活動の動向を探る上で重要な指標となります。企業側も求職者の動向を注視し、早めに採用戦略を見直すことが求められます。特に、求人倍率が高い業種では、求職者が複数の内定を獲得している可能性があり、競争が激化することが予想されます。そのため、採用活動のタイミングや方法を工夫し、柔軟な対応が必要となるでしょう。
長野県全体としては、依然として多くの求人があるものの、求職者の数も増加しているため、競争が激化していることが伺えます。特に、新しい技術やサービスに対応できる人材を確保するためには、企業側の積極的な研修制度やキャリアアップ支援が重要になるでしょう。また、求職者が安心して地域に定着できるよう、住環境や働き方の柔軟性を提供することが、地方の雇用促進にとって鍵となると考えられます。
⇒ 詳しくは長野労働局のWEBサイトへ